マチュア世代のキッチン収納の極意。しゃがまなくていい配置と収納とは? 料理研究家 上田淳子さんが指南
暮らしをより快適にするために見直したいのは、モノの持ち方や、しまい方ではないでしょうか。25年住んだ家から、リノベーションした中古住宅へと住まいを移した上田淳子さん。料理研究家ならではのキッチンのこだわりから食器や調理器具など収納の工夫まで、最低限のものですっきり暮らすための秘訣を見せていただきました!
上田淳子
うえだ・じゅんこ●1964年、兵庫県生まれ。辻学園調理技術専門学校卒業後、同校の西洋料理研究職員を経て渡欧。約3年間の料理修業の後に帰国。シェフパティシエを経て料理研究家に。近著『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)他、著書多数。
4分の1までモノを減らし、すっきり2人暮らしを実現
上田淳子さんが暮らすのは3階建ての一軒家。2021年12月、この新居に引っ越してきた。
「コロナ禍で夫の在宅勤務が増え、2人の息子も巣立つ時期。長年暮らした前の家はモノであふれ、快適とはいえない状態だったので、思いきって住み替えることにしました」
築28年ほどの中古物件を購入し、2階だけフルリノベーション。1LDKの間取りで夫婦2人の生活空間に変えた。
「先々を見据えて床は段差なしのバリアフリーに。リビング、ダイニング、キッチン、浴室、トイレ、寝室が同じフロアにあるので、年老いたらこの階だけで生活できます」
リノベーションを行う際、最もこだわったのがキッチン。
「なかでも特に重視したのは動線です。自分が動くのに一番ラク、というコンセプトで配置しました。L字型アイランドキッチンですが、中に立って手を伸ばせば鍋があり、水まわりのものがあり、必要最低限の調味料や調理器具もある。コックピット状態で、すべて目視できます」
料理研究家という仕事柄、食器や調理器具などがたくさんあるのでは……と思っていたが、意外にもキッチンはモノが少ない!
「引っ越しに際して、以前の家のキッチンにあったものを4分の1程度まで減らしたんです。道具も調味料もぐんと減らしたけれど、夫婦2人暮らしならこんなもので十分足りる。しかもワンアクションで行く・取る・使う・洗う・片づける、ができるようになり、家事が本当にラクになりました。それも動線にこだわったからこそだと思います」
夫に料理してほしいならキッチンを明け渡すこと
家族4人で暮らした間に増えたものを、2人暮らしに合わせて減らした上田さん。とはいえ、モノを減らすのは容易ではなかったと話す。
「まずは、あまり使わなそうなものを横によけて、1年かけて必要かどうか見極め。明らかに使わないもの、あったことすら忘れているものは不要と判断しました。引っ越しで大きな家具を捨てるのは本当に大変だということも痛感。それで収納棚は全部作りつけにして、大きな家具を減らしました」
モノを減らしたことで、スペースにも心にも余裕が生まれた。
「以前は掃除しようと思ってモノを出しても、元に戻すと結局ぎゅうぎゅう。だから今は、収納はマックス6割を心がけています。皿を重ねて収納するときは大皿を下にしますよね。そうすると大皿を使って戻すとき、上の皿をどけて、下に入れてまた重ねて……と面倒に。6割収納ならそういう手間も減り、気持ちもラクになると思います」
さらに上田さんが新居で目指したのは、夫にも使いやすいキッチン。
「たとえばこの先、私が入院することになったり、親が倒れて実家にしばらく帰ることになったりしたら、夫はその間ずっと外食というわけにもいかないでしょうから、少しは料理ができるようになってもらわないと困ります。少しずつ慣れてもらうためにも、夫にも何がどこにあるかわかりやすく、動きやすいキッチンにしたいと思いました」
夫が使うであろう基本の調味料はコンロ下にまとめ、よく使う調理器具はあえてしまわず見せる収納に。またL字型のアイランドキッチンを採用したことで、料理や片づけをしている姿が夫から見えやすくなり、学習してもらえるようにも。
「妻にとってキッチンは城。勝手にごちゃごちゃ触られるのは嫌だし、きれいに片づけてくれなかったらもっと嫌だし。でも、それに片目を閉じないと先には進めないと思いました。『何でそんなに散らかしながらやるのよ』なんて途中で口出ししたくもなりますが、ゴールがOKならよし、と余裕をもって見守ること。妻がいかに夫にキッチンを開放するかが重要だと思います」