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【らんまん】竹雄(志尊淳)の渾身の告白に「呼んでみただけ」の綾(佐久間由依)の塩対応は、ある種のご褒美か

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田幸和歌子

しかし、そこからにわかにベタな甘いラブシーンにならないところが、『らんまん』らしさで、綾らしさだ。綾は、東京にはこんな「はちきん」じゃなく、もっと可愛い子がいるだろうにと呟き、その申し出に重い荷物をおろした顔を見せ、「井上竹雄」とフルネームで呼び捨てする。続きの言葉を待ち、緊張した面持ちで返事をする竹雄に、綾は一言「呼んでみただけ」。そして、「おまんのせいで酔いがさめたき」と涼しい顔で宴会に戻り、主の顔に戻って「酒~! 峰の月持ってきいや~!」と宴を楽しむのだ。竹雄は当然ガッカリしたろう。しかし、そんな綾だからこそずっと好きなのだろう。「槙野姉弟を好きすぎる」オタクとしては、そんな塩対応もある種のご褒美に違いない。

一方、翌日、タキは医師の鉄寛(綱島郷太郎)に病気を治して欲しいと頼み込む。それは、もう十分生きたと思っていたタキの中に芽生えた、万太郎の子を抱きたいという、初めて自分自身のために抱いた「欲」だった。しかし、鉄寛は難しいと頭を下げ、東京に戻らずそばにいて欲しいと万太郎に伝えることを勧める。

しかし、そこに運命を変える手紙が。ロシアのマキシモヴィッチ博士が、万太郎が送った標本の中からマルバマンネングサを新種と認めたという知らせだった。そこでタキは自分の思いを押し殺し、万太郎に早く祝言をあげて東京に戻るよう勧めるのだ。

それにしても、正直、これだけ陰陽も湿度も異なる要素を1週間の中に詰め込んだら、バラバラな印象になりそうなものだ。ともすれば「オタク」描写がドタバタのハイテンションで描かれ、恋愛の切なさも、タキの愛情も台無しにされかねない。しかし、そうならないのは、脚本をよく理解し、その魅力を最大限に美しくまとめ上げる演出の巧みさが大きい気がする。名作の必須条件「脚本と演出の相性の良さ」を改めて感じる週だった。

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