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佐藤浩市さんが62歳の今、思うこと。「保守的にならず、自分の引き出しにない新しいものに取り組み続けたい」

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ゆうゆう編集部

抗うべきものには抗い、順応できるものには順応

62歳。40年以上にわたり俳優人生をひた走ってきた。

「長く続けてこられたのは、僕自身ではなく皆さんのおかげ。呼んでくれる監督たちがいて、作品があって、観てくれるお客さんがいて。劇場に足を運んでくださるお客さんには、やっぱり何かお土産をもって帰ってもらいたいと常に思っています」

近年は映画鑑賞の手段が広がり、映画を取り巻く環境も大きく変化。日本映画界の最前線で活躍し続けてきた佐藤さんだからこそ、映画のあり方に熱い想いも抱く。

「僕は若い頃、フィルムというものが存在する限り、その映画は半永久的に語り継がれ、みんなが観ていくものだと思っていました。劇場でリバイバル上映があれば駆けつけて、胸躍らせて。今、映画はそういうものではなくなってしまったけれど、僕はやっぱり残る映画をやりたい。未来永劫語り継がれるために、時代を経てもみんなが新鮮に観られる映画に自分が参加したいという想いは、若い頃にはなかったものです」

60代になり、さまざまな変化を感じることも増えた。

「気力であったり体力であったり、変わるはずがないと思っていたことが変わっていく。それに対してどう抗っていくかということが、これから一番必要なことなんじゃないかと思います。抗わないという生き方もあるかもしれないけれど、僕らの仕事なんて定年退職もないし、変な話、20代、30代の頃と同じ弁当を今も変わらず食わなきゃいけないわけですよ。若い頃よりテストの回数が減ったり、スケジューリングなどに多少の気遣いはあったとしても、基本的にやることは同じ。そういう変わらないことと、変わっていく自分自身への抗いと。だから抗うべきものには抗い、順応できるものには順応したいと思っています」

佐藤さんにとって“抗うべきもの”の第一は気力の衰え。

「年齢を重ねるにつれて、物事をやることに対する気力を失いかけているという事実に気づかされます。還暦を過ぎて何かを切り開いていく人もいれば、保守的に余生を考える人もいて、二極化してくる年代だと思うけれど、僕はできれば抗って新しいことに挑戦していきたいと思う。『これは上から3番目の引き出しにあったよね』と引き出しの中から取り出すんじゃなくて、まったく引き出しにない新たなものに取り組みたいんです。そういうことがあと何年できるかな。それがこの先の僕の課題だと思っています」

一方で、体は衰え知らずに見える。映画の中では引き締まった肉体美を披露し、この日の撮影でもすらりと美しい立ち姿と軽やかな身のこなしが印象的だった。

「ぶっちゃけ、そこらへんの62、63歳よりは全然動けますよ(笑)。趣味のゴルフでもまだまだ若い人たちには負けない……いや負けるんだけど、でも同じくらいは飛ばしたいと思ってる。結局、本業も趣味も体が動いてなんぼ。だから常に動けるようにはしておきたいですね」

PROFILE
佐藤浩市

さとう・こういち●1960年、東京都生まれ。80年に俳優デビュー。
翌年、『青春の門』でブルーリボン賞新人賞を受賞。
以降、映画やドラマなどで活躍。
94年『忠臣蔵外伝 四谷怪談』、2016年『64 ロクヨン 前編』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
23年は映画『ファミリア』『仕掛人・藤枝梅安』第二作、『せかいのおきく』『大名倒産』など。10月には『愛にイナズマ』が公開。

INFORMATION

今この瞬間を生きる。2人の男の再起をかけた胸熱ドラマ
映画『春に散る』

沢木耕太郎の傑作小説、待望の映画化。世界チャンピオンを目指すも挫折し、アメリカへ渡った元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)は、40年ぶりに帰国し、かつての仲間に会いに行く。そんな広岡の前に、不公平な判定負けに怒り、一度はボクシングをやめた黒木翔吾(横浜流星)が現れ、広岡の指導を受けたいと懇願。やがて2人はともに世界チャンピオンを目指し、命をかけた戦いの舞台へと挑んでいく―。

©2023映画『春に散る』製作委員会

出演/佐藤浩市、横浜流星、橋本環奈、窪田正孝、山口智子 他
監督/瀬々敬久 脚本/瀬々敬久、星 航 原作/沢木耕太郎
8月25日(金)より全国公開 配給/ギャガ
https://gaga.ne.jp/harunichiru/

※この記事は「ゆうゆう」2023年9月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


撮影/Hananojyo スタイリング/喜多尾祥之 ヘア&メイク/及川久美 取材・文/本木頼子

ゆうゆう2023年9月号

ゆうゆう世代は、住み替え・暮らし替えの適齢期。どこで暮らす? どう暮らす? 『ゆうゆう』9月号は、人生を豊かにする住み替え、暮らし替えを大特集! 女優の財前直見さん他、住み替えに成功した3人の実例と住み替え時の注意点を不動産の専門家がアドバイス。住み替えには高額な費用がかかります。この企画を参考に、後悔しない住み替え・暮らし替えを考えてみませんか。もうひとつの特集は「折れない心の育て方」。辛いことや、自分の力ではどうしようのないことが起きたとき、希望をもって前向きに生きていくには? 女優の秋野暢子さん、お笑いタレントのにしおかすみこさん、書家の金澤泰子さん、そして心理カウンセラーの中島輝さんにお話を伺いました。『ゆうゆう』9月号は内容充実! 50代からのあなたを応援します。

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