91歳・樋口恵子さんのひとり時間。「何といってもこれほど面白いものはない」と毎日読んでいるのは?
大家族であっても、おひとりであっても、「ひとり力」がないと生きていけないといいます。今年91歳になった評論家の樋口恵子さんは、ひとりの時間をどう過ごしていらっしゃるのでしょう。話題の新刊『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』から、樋口さんの日常を教えていただきます。
ひとり時間の過ごし方
昔、雑誌の取材で「これからの高齢者は『ひとり力』がないと生きていけない」とお話ししたことがありました。だって、いつかはひとりになっちゃうんですもん。
でも、自分が老いて実感しました。ひとりでも大丈夫と思いたいけれど、本当は全然大丈夫じゃない、と。
それでも人間、究極はみんなひとり。たとえ大家族であったとしても、おのおのに意思があり、結局は自分ひとりです。寂しくもありますが、そう思って生きていくしかありません。
さて、私のひとり時間はというと、寝転がって本を読んだり、新聞を読んだりしています。そうすると、娘に「起きろ!」「食べろ!」としかられるのが常です。
仕事に関係のある本もよく読みます。一遍読んで、二遍読んでから「へえ~」と思ったりすることもあります。
昔は藤沢周平が大好きでした。あの世代の作家としては、という前置きが必要ですが、男尊女卑のジェンダー意識から解放されて、自立したいい女性がたくさん出てきます。
もちろん作品は作品として読みますから、山本周五郎や吉川英治、剣豪小説を書いている五味康祐なども面白がって読んだものですが、やっぱり藤沢周平が面白い。ドラマはあまり見ませんが、「三屋清左衛門残日録」はさすが藤沢周平、気に入りました。
新聞は3紙契約しています。寝転ぶ時間がないときは2階の自室から1階へ下りていって、新聞をチェック。隅々まで目を通すとはいかないけれど、とにかく3紙には全部目を通します。
何といっても新聞くらい面白いものはない。今でもそう思っています。