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【中野翠のCINEMAコラム】リチャード三世オタクの主婦が歴史学者もビックリの大発見を!『ロスト・キング 500年越しの運命』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。この映画は、リチャード三世オタクの主婦が、英国王室の歴史を揺るがす世紀の大発見をしたという実話をベースに作られたもの。監督は、過去にも英国王室にまつわる映画を手掛けてきた名匠スティーヴン・フリアーズです。

平凡な主婦が、ふとしたことから歴史に興味を持ち、独自の推理と探索によって、歴史学者もビックリの大発見をしてしまったという話。実話をもとにした映画です。

主人公の主婦フィリッパ(サリー・ホーキンス)は二人の息子を育てあげ、今では夫と別居中(と言っても仲が悪いわけではない)。

ある日、フィリッパは演劇の『リチャード三世』を観て感動。リチャード三世に関する本を読み、さらに「リチャード三世協会」にも入会。一気に“リチャード三世オタク”になってゆく。職場を無断欠勤までして、リチャード三世の死の真相の調査にのめり込む。

そんな中、「リチャード三世の亡骸は、大昔に取り壊されたレスターのグレイフライアーズ教会の敷地内に眠っている」という説をみつけ、興奮。

歴史的文書を調べあげたり、大学の講義にも出席したり……。堂々たるアマチュア歴史家ぶりが評価され、市議会や大学から支援されるようになる。

そして、ついに! 2012年8月25日、再発掘が行われることになる。さて、フィリッパの推測通り、リチャード三世の遺骨は出て来るのかどうか?!――という話。

ひとつのことに、こんなに夢中になれる人がいた。それも、若くもない中年の女の人、しかも持病(筋痛性脳脊髄炎)を抱えているというのに……と、グウタラな私は圧倒されてしまう。

と同時に、フィリッパの情熱は、もしかすると難病を抱えていたからこそだったのかも、とも思う。彼女にとって「死」は身近だったからこそ、濃縮した人生を望んでいたのかもしれないのだ。

監督はベテランのスティーヴン・フリアーズ(『マイ・ビューティフル・ランドレッド』『グリフターズ 詐欺師たち』『ヴィクトリア女王 最期の秘密』など)。さすがに手がたく、メリハリもきかせた演出。80代前半という歳だけれど、その健在ぶりを見せつけてくれたのも、うれしい。

『ロスト・キング 500年越しの運命』

監督/スティーヴン・フリアーズ
出演/サリー・ホーキンス、スティーヴ・クーガン、ハリー・ロイド、マーク・アディ 他

9月22日よりTOHOシネマズ シャンテ 他 全国公開
(イギリス 配給/カルチュア・パブリッシャーズ)

© PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

※この記事は「ゆうゆう」2023年10月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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