【虎に翼】よね(土居志央梨)の心の傷はまだ癒えていなかった。寅子は恵まれた環境にいると認識させられた
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田幸和歌子
ところで、寅子は戦災孤児の対応につとめるなかで、よね(土居志央梨)、轟(戸塚純貴)と再会を果たす。シンプルに喜ぶ轟のいっぽうで、よねの心の傷はまだ癒えておらず、寅子にかたくなな態度で接する。前週の香淑(ハ・ヨンス)に続き、感動の再会とはいかず、戦前から指摘されていたが、〝戦後もなんだかんだ恵まれた環境に居られる寅子〟という位置づけを視聴者は認識する。
寅子の行動は基本的に善意からくるもので、だからこそときに向けられる相手の抱える闇の部分を突きつけられることで困惑する。今週直面したよねも、道男も、前週の香淑もそうだ。最大の理解者であった夫の優三(仲野太賀)や、気高いかつての同僚・花岡(岩田剛典)には、そういったものは存在しなかったゆえ、安心できる存在だったのかもしれない。
そして、寅子が善意の人、正義の人であり続けられた大きな存在だったのが、母・はる(石田ゆり子)だ。普段は心優しくおだやかであるが、序盤の名場面である、桂場(松山ケンイチ)に啖呵を切るシーンのような強さもあわせもつ。寅子がさまざまな苦難を乗り越えられたのも、はるの存在が大きかった部分もあるだろう。
そんなはるが、息を引き取る場面で、寅子はまるで子供のようにすがりついて声をあげて号泣する。夫の死などではすぐには感情を表さなかったことに比べると、寅子にとってのはるという存在がよくわかる。この別れは、「娘」という、ひたすら愛情を注いでくれるポジションからの別れも意味する。
いよいよ真の意味で自立した女性裁判官として、寅子は覚醒していくのだろうか。その過程でまた、さまざまな壁に直面しては乗り越えていくのだろうか。情報量が多いなか、ようやくドラマは折り返し地点だ。
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