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【戦後80年に読みたい一作】坂口安吾の『わが戦争に対処せる工夫の数々』あらすじ紹介。戦争の中で生き抜く知恵とユーモアとは？

小説

公開日

2025.06.11

更新日

2025.06.11

ゆうゆうtime編集部

【戦後80年に読みたい一作】坂口安吾の『わが戦争に対処せる工夫の数々』あらすじ紹介。戦争の中で生き抜く知恵とユーモアとは？

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戦後80年である2025年に特に読みたい小説を紹介します。坂口安吾の『わが戦争に対処せる工夫の数々』は、戦争という過酷な現実の中で、いかにして生き抜くかに奮闘した一人の「男」の実録話です。その独特な皮肉とユーモアあふれる書きぶりは、現代でも多くの示唆を与えます。

戦争への「覚悟」と初めての工夫

坂口は戦争から逃れる術がなくなった現実に向き合うところから話を始めます。「兵隊にとられれば仕方がない」と覚悟を決めつつも、戦地で「なるべく死なない工夫」を模索します。身体の素早さと機敏な反応が生死を決める場面では、幼い頃から親しんだスポーツマンとしての経験が役立つと考えていました。しかし、戦争は予測のつかない「偶然」であるため、完全に死を避ける保証はできません。この矛盾に満ちた状況下で、坂口は現実的な対処を追求し始めます。

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新潟の海で生存訓練

昭和17年、坂口は新潟に移って「生き抜くための訓練」を始めます。過酷な状況を想定し、豪雨の日にも海で泳ぎ、荒れる波と格闘しました。こうした努力は、敵による上陸や輸送船での事故を想定したものでした。昔から頻繁に新潟の海で鍛えてきた坂口にとって、これは自然な流れでした。また、食糧不足が迫る時代背景の中、新潟の農村では米が容易に手に入る環境も、彼の選択を支えていました。

独自の「耐久力」を育てる水風呂療養

戦争が激化すると、新潟の海での訓練がかなわなくなります。代わりに坂口は水風呂療養を編み出します。東京の自宅の風呂おけに冷水をため、1日に何度も没することで体力と耐久力を鍛えます。これは冬に至っても継続され、極寒の中の苦しみを乗り越えたところで心臓に異常を感じ断念しましたが、この経験が彼をさらに強靱（きょうじん）にしました。彼のユニークな努力は滑稽にも見えますが、生存への執念がその根底にありました。

防空壕の改善と戦争見物

坂口の工夫は安全確保にも向けられました。彼は防空壕の改善に積極的に取り組み、コンクリート製の壕を自作。また「たこつぼ壕」と呼ばれる工夫された壕も手に入れ、安全性を追求しました。しかし坂口自身は、戦争そのものを「見物」したい欲求を持っており、そのため疎開を拒否し、爆撃の中心地である東京にとどまることを選びます。彼の「戦争観」は独特で、壮絶な現実に魅力や興味を感じるところに、彼の自由な精神が現れています。

終戦間際の訓練と矛盾を抱えた生きざま

坂口は終戦まで生存訓練を怠りませんでした。巨大な大谷（おおや）石を抱えるなど過酷な身体訓練を日常的に行い、いざというときのための体力作りに励みます。周囲の人々からは異端視されることもありましたが、それでも彼は「生き残るための矛盾」を受け入れ行動を続けました。戦争を「見物」するために生命を賭ける姿勢は、坂口の奔放な個性と戦時下の狂気が交錯した生きざまを象徴しています。

まとめ

坂口安吾の『わが戦争に対処せる工夫の数々』は、生き抜くための努力や奇想天外な工夫をユーモラスに描いたエッセイ風小説です。戦争という非常識の中で、常識では説明できない行動や考えが次々と描かれます。身体的・精神的に戦争に向き合った坂口の描写はリアルでありながら、彼特有の皮肉やユーモアが全体の空気を軽やかにしてくれます。本作は、戦時中の精神的・肉体的課題をユニークに洞察できる一冊となっています。坂口の自由奔放な視点を通して、読み手に「生きる知恵」と「笑い」の力を教えてくれる作品と言えるでしょう。