退職後の新しい暮らし方とは?50代後半女性が選んだ築38年のマンション生活と節約術
人生の後半戦、“自分サイズ"を見直して、シンプルかつコンパクトに暮らし替えをされた方を紹介する「小さい暮らし」の見本帖。今回、登場いただくのは、契約社員として働く傍らブイロガーとしても活躍するナツさん。重かった鎧を脱いで60代、ほどよい暮らしを模索中です。
▼こちらもどうぞ▼
>>60歳目前に愛娘を喪い、ひとりに。パフューマーがこれからを見つめ直すために選んだ、30㎡の小さな部屋
Profile
ナツさん/契約社員、ブイロガー●1963年生まれ。黎明期からインターネットに関わり、広告会社やECワイン会社などでネット関連のさまざまな業務を経験。現在は事務職の契約社員として勤務。日常と心象を綴るブイログが人気。
「bonbons」https://www.youtube.com/@bonbonslife
本棚のある小さなリビングがナツさんのお気に入りの場所。
「好みのものと色しかない空間で、好きな音楽を流しながら窓の外の空を眺めたりして、妄想し放題です」
本棚はオーダーしたもの。大好きな小説家、江國香織さんの自宅の本棚がイメージソース。
退職を機に都内から郊外の静かな住まいへ
アンティークの小ぶりなテーブル。愛蔵書が詰まった本棚。人生をともに歩んできた家具のやさしい息づかいを感じるナツさんの住まい。YouTubeのブイログ(動画版ブログ)からも伝わる、光に満ちたこの部屋に暮らして6年になる。
20代で17平方メートルのワンルームからひとり暮らしを始め、30代の数年間でピリオドを打った結婚生活も挟み、徐々に広い住まいへと移り住んできたナツさん。
「最初の頃は新築やリフォーム直後の物件を選び、〝その部屋の1人目の住人〟であることにこだわっていました。それは、前の住人の影響を受けずに暮らしたかったから。映画やドラマの見すぎですよね(笑)。その後は窮屈な気持ちから逃れたくて、広さや日当たりを重視するようになりました」
40代は好きなワインの仕事に没頭し、収入もそれなりに。住まいもグレードアップした。ワイン好きの同僚たちとの飲食代は毎月結構な金額になったが、お金が入ることがわかっていたため、使うことに躊躇がなくなっていた日々。〝ご褒美浪費〞にも明け暮れていたという。
50代では失業を経験し、失意の中にいた時期もあったが、ネット事業支援会社にいったん落ち着く。だが、常に売り上げを問われるプレッシャーの中、毎週月曜にはクライアント企業に提案資料の提出を求められた。
「その重圧から土日も悶々と過ごし、外に出かけることもなくなってしまって……」
とうとうナツさんは「空が青く見えない」という極限状態に。これでは生きている意味がないと仕事を辞め、住まいも郊外へと移すことにした。そこで選んだのが、現在暮らす築38年、3DKの賃貸マンション。
「決め手になったのは過去イチ安い家賃でしたが、日当たりのよさや、駅近ではない〝ひっそり感〟が気に入りました。妄想に浸る時間を思い切り楽しめそうだったので」とほほ笑む。
窓辺でローズマリーを乾燥中。
「同僚のお父さんが畑をやっていて、いろいろなものをいただくんです。ありがたいですね」
ブイログの編集作業に行き詰まると、キッチンに立って気分転換。
ブイログで紹介する料理レシピのファンも多い。
寝室の一角に設けたデスクコーナー。ブイログの制作はいつもここで。
リビングの本棚には大切な小説を収め、こちらの本棚には実用書を。
