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【べらぼう】大奥の高岡(冨永愛)、大崎(映美くらら)は何者? 幕政との関わりは?

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鷹橋 忍

【べらぼう】大奥の高岡(冨永愛)、大崎(映美くらら)は何者? 幕政との関わりは?

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第34回より ©NHK

横浜流星さんが主人公・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/蔦重)を演じる、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめものがたり)〜」。当時の文化や時代背景、登場人物について、戦国武将や城、水軍などに詳しい作家・鷹橋 忍さんが深掘りし、ドラマを見るのがもっと楽しくなるような記事を隔週でお届けします。今回は大奥の女性について取り上げます。

NHK大河ドラマ『べらぼう』 第32回「新之助の義」と第33回「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのごとく)」が放送されました。

第33回では、映美くららさん演じる大崎が、冨永愛さん演じる高岳(たかおか)のもとを訪問。「送りつけられてきた」という手袋を高岳に差し出したところ、高岳が表情をこわばらせる様子が描かれていました。

高岳や大崎はどのような人物だったのでしょうか? 今回は高岳や大崎がいた「大奥」について取り上げたいと思います。

江戸城には大奥が三カ所あった

まず、江戸城には「大奥」と称される区画が、本丸、西の丸、二の丸の三カ所にありました。

本丸の大奥には将軍とその正室(御台所)・側室や幼少の子が、西の丸の大奥には世子(せいし/後継ぎ)とその家族、もしくは「大御所」と称される隠居した将軍が、二の丸の大奥には、前将軍の正室などがおもに住んでいました(竹内誠 深井雅海 松尾美恵子篇『徳川「大奥」辞典』)。

一般に、単に「大奥」と称したときは、本丸の大奥を指します。

高岳と田沼意次の関係は?

高岳は安永3年(1774)以後、大奥のトップである御年寄(おとしより)の筆頭となった大奥女中です。

宝暦期(1751~1764)は、松島(眞島秀和さんが演じた十代将軍・徳川家治の側室であるお品の養母)が御年寄の実力者で、高岳は第二位でした。ですが、明和期(1764~1772)には高岳が実力者となり、渡辺謙さんが演じる田沼意次(おきつぐ)と手を結んでいたといいます。

大奥女中たちに疎まれると、将軍に告げ口されて、地位を失うこともあり得ます。反対に、将軍は御年寄の意向に影響を受けやすい傾向にあるため、口添えを頼めば役職を得ることも不可能ではありませんでした。

田沼意次にとって、将軍の威光を背にした大奥は、敵に回せば恐ろしく、味方につければ頼もしい存在だったのでしょう(安藤優一郎『田沼意次 汚名を着せられた改革者』)。高岳も意次の権力を背景に、大奥での立場を強めようとしていたようです。

ところが、天明期(1781~1789)には高岳も高齢となり、実権は滝川という御年寄が握るようになりました。ドラマでも描かれた、井上祐貴さんが演じる松平定信(さだのぶ)の老中登用を反対したのは、この滝川と高岳です。

【べらぼう】大奥の高岡(冨永愛)、大崎(映美くらら)は何者? 幕政との関わりは?(画像2)

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第33回より ©NHK

松平定信の老中起用を反対する

田沼意次が失脚し、生田斗真さんが演じる一橋治済(はるさだ)と御三家一同より松平定信を老中に推薦されると、城桧吏さんが演じる十一代将軍・徳川家斉(いえなり/一橋治済の子)は、高岳と滝川に意見を求めました。

そのとき二人は、九代将軍・徳川家重(いえしげ)の代に定められた「将軍の縁者は、幕政に参与できない」という内規への違反を理由に反対したといいます。

松平定信の実妹・種姫は、十代将軍・徳川家治の養女に迎えられており、同じく家治の養子である十一代将軍・徳川家斉と姉弟の関係にあります。ゆえに、定信は「将軍の縁者」にあたり、内規に反するため、定信は重職である老中には就任できないというわけです。

この高岳たちの意向を一橋治済や御三家に伝えたのが、御年寄の大崎です。高岳と滝川と違って、大崎は治済に取り込まれていたといいます。

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