坂東玉三郎さんが語る六条御息所の嫉妬心と哀切、美しき『源氏物語』シネマ歌舞伎の魅力
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ゆうゆうtime編集部
現代歌舞伎屈指の女方として絶大な人気を誇る、坂東玉三郎さん。シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』が9月26日から公開されます。作品への思いや、共演者・市川染五郎さんとのエピソード、舞台芸術の魅力などを語っていただきました。
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シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』は、昨年10月に歌舞伎座で上演された舞台を収録したものです。
現代女方最高峰の坂東玉三郎さんが凄艶な女心を見せる六条御息所を、そして”歌舞伎界のプリンス”と呼ばれ注目を集める市川染五郎さんが世の女性を魅了する稀代の貴公子・光源氏を演じて、大きな話題を呼びました。
公開に先立ち、都内で開かれた坂東玉三郎さん登壇の記者懇親会の模様をお届けします。
嫉妬心については「練習しなくてもできます(笑)」
「源氏物語自体は、舞台にすることが難しい作品ですが、六条御息所は人間であれば誰もが根源的に持っている嫉妬心をテーマとしているため、見る人の琴線に触れるものがあります」
と、作品の見どころを玉三郎さんは語ります。
六条御息所を演じるにあたり、
「(嫉妬心については)練習しなくてもできます(笑)」
とユーモアたっぷりに話されました。
また、六条御息所が生霊となって葵の上を苦しめる場面については、
「本人は怨霊になっていることを知らず、そこはある意味では赦される点と言っても良いでしょう」
とキャラクターへの共感もにじませます。
光源氏を演じた市川染五郎さんについては、
「幕が開いたら、先輩・後輩などは考えないで欲しいと伝え、実際そのように演じてくれました」
と公演当時を振り返ります。
さらに、
「自分の意見を伝えることの重要性も伝えました。自らの意見を言うことで、その意見に責任を持つことになりますし、そのような参加の仕方が良い経験になると思います」
と、作品作りに欠かせないアドバイスも。
「なるほど」と思えるものを追求したい
舞台公演では、美しい世界観を生み出すための工夫も凝らされました。
「源氏物語の時代の文化である垣間見を基本として、舞台セットは全て几帳にしました。また、几帳をリバーシブルにして舞台転換をすることで、表裏で違った世界観を表現しました」
玉三郎さんは自ら映像制作にも携わっています。
「映像として見ると、一緒に芝居をしている共演者の良さに気づかされます。染五郎くんも良い表情をしていました」
と新たな魅力を発見する機会にもなったそうです。
さらに舞台づくりへの思いを、次のように語ります。
「古典の中に普遍的なものを見つけることが重要ですし、見ている人と気持ちがつながらないと意味がありません。ただ華やか、残酷であれば良いというものではなく、お客様が『なるほど』と思えるものを作りたいです。
例えば、『華岡青洲の妻』を見て、『人間ってこういうものなのだな』と感じる、そういう部分を追及してきました。そのような部分がどこか一点でもあるものを作りたいです」
また、かつて舞台美術家ボブ・クローリーと共に仕事をした際の印象的なエピソードも披露してくださいました。
「あなたにとって良い芝居は?と聞いたところ、(胸にグッと手を当てる仕草をして)こういうものだと。(自分も)そのような芝居作りをしていきたいと思っています」
