坂東玉三郎さんが語る六条御息所の嫉妬心と哀切、美しき『源氏物語』シネマ歌舞伎の魅力
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ゆうゆうtime編集部
【見どころ2】六条御息所という人物と、光源氏への凄絶な恋心
『源氏物語』には様々な女性が登場しますが、九帖「葵」に登場する六条御息所は、多くの女性の中でも特筆すべき女性です。前東宮妃という高貴な身分に加え、美貌と教養を備えていますが、夫の死後、光源氏と恋に落ちることで苦悩します。
一方、光源氏は世の女性を魅了する稀代の貴公子で、正妻の葵の上は懐妊中です。六条御息所は、光源氏が年下ということも相まって自分の気持ちに素直なれず、次第に平常心を失います。そして、光源氏も六条御息所に惹かれつつも、次第にその気位の高さに息苦しさを覚えていきます。そんな中、六条御息所は、遂に想いが募り知らず知らずのうちに生霊となって葵の上を苦しめてしまいます。
『源氏物語』に出てくる女性の多くが儚く運命に翻弄されるなか、六条御息所は生霊となるほどの激しい気持ちを持つ女性として描かれます。他方で、六条御息所が抱く嫉妬心や愛するがゆえに抱く強い想いは、女性なら誰でも共感できる部分でもあります。その想いが物語に起伏を与え、源氏物語の中でも特にドラマチックで魅力的な場面となっています。
【見どころ3】玉三郎さんが魅せる究極の恋物語
坂東玉三郎さんは、重要無形文化財保持者(人間国宝)であり、芸と華を兼ね備えた現代歌舞伎屈指の女方です。これまでにも『源氏物語』をテーマとして、光源氏、藤壺、浮舟を演じてきました。今回演じる六条御息所役は、高貴な身分ゆえに恋に思い悩み、嫉妬心から自分の意に反して他の女性を苦しめるという役どころです。
玉三郎さんは、令和6年10月歌舞伎座筋書において、本演目について次のように語っています。
「六条御息所は、高貴な身分と高い教養や知性それらに対する誇りを持ち合わせるがために、年下の光源氏へ素直な心を表現できずに、自分を押し殺し苦悩するという、『源氏物語』ならではの女性の恋心を凝縮したような存在だと感じております」
また、特典映像では源氏物語が長年愛されてきた理由や本作で着用した衣裳について語る玉三郎さんのインタビューも収録。さらに、自らが映像制作にも携わり、編集や無観客での撮影を通して本作の魅力を最大限に引き出すよう尽力しました。
シネマ歌舞伎では、玉三郎さんが演じる美しくドラマチックな六条御息所が、大スクリーンで楽しめます。
プロフィール
坂東玉三郎(五代目) 大和屋
1957年に初舞台を踏む。1964年に十四代目守田勘弥の養子となり、歌舞伎座「心中刃は氷の朔日」のおたまほかで五代目坂東玉三郎を襲名。桜姫のほか、「助六由縁江戸桜」の揚巻、「伽羅先代萩」の政岡、「壇浦兜軍記」の阿古屋など当り役は多い。2012年、重要無形文化財(人間国宝) に認定。2013年仏芸術文化勲章最高賞コマンドゥール章受章、2014年紫綬褒章、2016年日本芸術院賞・恩賜賞、2019年高松宮殿下記念世界文化賞を受賞、文化功労者に選出。
市川染五郎(八代目) 高麗屋
2005年3月27日生まれ。十代目松本幸四郎の長男として東京に生まれる。2007年(平成19年)6月歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見え。2009年6月歌舞伎座『門出祝寿連獅子』童 後に 孫獅子の精で初舞台。2018年1月・2月歌舞伎座『勧進帳』源義経他で八代目 市川染五郎を襲名。時代劇ドラマ「鬼平犯科帳」シリーズ、劇場版『鬼平犯科帳 血闘』にも出演。
写真/岡本隆史
シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』
2025年9月26日(金)全国公開
配役 :
六条御息所:坂東玉三郎
光源氏:市川染五郎
葵の上:中村時蔵
左大臣家の女房衛門:中村歌女之丞
比叡山の座主:中村亀鶴
左大臣:坂東彌十郎
北の方:中村萬壽
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