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山中漆器がV字回復した秘密! 老舗4代目が挑んだデザインブランド戦略

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ゆうゆうtime編集部

デザイナーとのコラボで500点以上をプロデュース

――食生活の変化などで漆器を使う機会も減りましたしね。

おっしゃるとおりで、若い人の中には茶托(ちゃたく)とか茶櫃(ちゃびつ)を知らない人もいます。
そこで一念発起、商品開発に注力して、ブランド力を高める戦略に転換することにしたのです。それまでの薄利多売ではなく、付加価値の高いものを作るためにデザインを商品開発の切り口にしました。

それまでは自社でデザインしていたのですが、デザイナーとのコラボを試みました。
第一弾は白いお椀でした。ところが、これがまったく売れなかった。「せっかくのケヤキに何でこんな白い塗装をするのか」という厳しいお叱りも受けました。

――それでも、第二弾に挑戦されましたね。

当時、伝統工芸の世界では飛び道具というか奇抜なデザインのものを一発作って失敗し、あとが続かないパターンも多かったんです。デザイナーの作るものはなかなか動かないなぁ、みたいな風潮にもなり……。

ですが、われわれは果敢にも次に挑戦し、作ったのはスピーカーでした。首都圏での展示会で評判はかなりよかったのですが、値段を聞くと皆、引く。結局、ひとつしか売れませんでした。

――失敗の原因は何だったのでしょう?

畑違いな商品開発だったのかと思います。スピーカーの知識も乏しく、販路や売り方もわからなかった。自分でハンダ付けまでしていました……。

――でも、あきらめずに挑戦を続け、ついに茶筒KARMI(かるみ)シリーズでブレイクしました。「美術品のように美しい茶筒」と海外からも注目されています。

おかげさまで日本のグッドデザイン賞やドイツのデザインアワードなど、国内外で数々の賞をいただきました。

――成功の秘訣は何だと思われますか?

過去の失敗は商品開発をデザイナーに丸投げしたからだと思います。市場調査や顧客ニーズの把握、ターゲットやコンセプト、自社の強みやリソースの配分など、商品開発に必要なことを把握すること、それらを踏まえてデザインを依頼したことがよかったのだと思います。

それからは自分たちが作り慣れているお椀やカップ、茶筒といったアイテムのデザインを今の時代に合うように変えたのです。自ら商品企画担当として様々なデザイナーを起用し、今まで500 点を超える商品を開発してきました。

――独自の「強み」を見直したというわけですね。

木材の性質と山中漆器の伝統的な木取り方法を正しく理解することで、薄く挽いても強度を保てたり、乾燥などによる変形を抑え、精度の高い蓋物が作れたり、加飾挽きという山中漆器独自の意匠を入れるなど、他の木工品との差別化を図りました。

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