夫・渡辺徹さんが亡くなって3年【榊原郁恵さん】が語る“60代からのしなやかな自立”とは?リフォーム計画も
自分の意見をきちんと人に伝える術は大切
最近、郁恵さんには新たな気づきがあった。
「22年に夫が亡くなってから、家の中はそのままでした。今年6月には、3年間演じた舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のマクゴナガル校長役を卒業。さらに、最近、飼っていた愛犬を亡くし、どんよりと灰色の雲に覆われたような気分で過ごしていました」
そんなときふと、「環境を変えたい。リフォームして友達を呼べたらいいな」と思ったという。
「それをちょっと姉に話したら、あれよあれよという間に人づてで業者さんが見つかり、急遽、リフォームのイメージを伝えなくてはいけなくなったんです。頭の中の『こんな感じ』というのを言葉にしても100%は伝わらないから、iPadでイメージに近い画像を探しました。それまで、そういうことは二男(俳優の拓弥さん)に任せっきりで、食事に行くときも『どこかいいお店調べといて』なんて頼んでいたんですが、今回は自分がやらなければ話にならない。一生懸命探して、コレと思う画像を見せて説明しました。検索とか苦手なんですけど、私なりに頑張りました(笑)」
今回はひと部屋をリフォームする。
「実はまだ、お仏壇がなかったので、ちゃんとお仏壇を用意して、皆が集まったときにお参りできる部屋を作ることにしました。はじめのうちは、どういうリフォームにするかイメージが定まらなくて二転三転したんですが、仏間を思いついたとたんに、これだ! と目の前が開けるような気分でした。夫はひとりっ子なので、いずれ義理の両親のお位牌も私が守ることになるし。夫と一緒に建てた家をこれからは私が守っていく、という自覚を改めて持つことができました」
リフォームがきっかけで、今の自分の状況や今後やるべきこと、自分にしかできないことを突き詰めて考えた、という郁恵さん。
「リフォーム前は、『お母さんはこれから衰えていく一方で、仕事も長いことできないしさ』などと悲観的なことを息子たちに言って、頼りたい、甘えたいという気持ちになったこともありました。でも、リフォームで自分の考えをまとめざるを得ない展開になり、頭の中のイメージを相手にわかりやすく伝える術を身につけました。それは私にとって、自立に通じる出来事でもあったのです」
柳は風に流されているようで、実はしっかり立っている。そんなしなやかな自立が郁恵さんにはよく似合う。
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撮影/中村彰男
スタイリング/坂能 翠
ヘア&メイク/宮原幸子
※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。
