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抹茶人気で注目!持ち運び便利な山中漆器の茶箱「chabako」開発ストーリー

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ゆうゆうtime編集部

正統と実用のせめぎあい……究極の茶箱づくり

我戸 そんなわけで、ご提案に乗ることにしました。門外漢の我戸幹男商店がいきなり「茶道具を作りました」というより、まずは茶箱というライトなものから始めることや、ガラスや陶器という持ち歩きが怖い茶道具も”すべて漆器でそろえる”というのはおもしろいんじゃないか、と思ったんです。

――「我戸幹男商店」としてもチャレンジだったのですね。実際にスタートしてからは、どのような点に苦労されましたか?
我戸 製品化の前に試作をするのですが、さらにその前に、材料を乾燥させる工程があります。十分に乾燥させておかないと変形のおそれがあるからです。茶箱には道具が何種類もあるので、すべての材料を準備して試作品を作り、それぞれが完成するまでにかなりの時間を要しました。

――点数の多いセットものですから、単品のようにはいきませんね。
我戸 ひとつの試作が完成して製作に移れる段階になっても、職人の手が慣れるまでには時間がかかります。ひとつ作るのに5工程くらいあり、「今日はここ」と決めて、一日に1つの工程を把握していくわけです。

――人の手でひとつひとつ作るのには時間がかかるということですね。何人くらいの職人さんで作っているんですか?
我戸 すべてを30代の職人ひとりで担当しています。製作と同時に次の試作も進行するので、スムーズに回るようになるまでがたいへんでした。

――特に作るのがたいへんだった道具は?
我戸 茶筅(ちゃせん)筒は角度がついているので、工程が複雑で難しかったですね。

――茶箱ならではの苦労もありましたか?
石川 すべての道具が箱にきちんと収まるように、ミリ単位の打ち合わせが必要でした。茶箱の中には掛合(かけごう)という中蓋があるんですが、途中で「掛合がない方が、道具の収まりがいいのでは?」という議論になったこともありました。でも、お点前で使いますし、掛合あってこその茶箱なので、そこは譲れませんでした。

――機能性と正統性のせめぎあいがあったのですね。
石川 はい。例えば、これはこれ以上の高さになると蓋がしまらないけれど、本来はこうでなくてはならない、というような難題を解決するために試作を繰り返しました。

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