抹茶人気で注目!持ち運び便利な山中漆器の茶箱「chabako」開発ストーリー
山中漆器だからこその軽い・薄い・割れにくい
――こちらのchabakoは割れにくいという特性もありますね。
石川 すべてケヤキ材なので割れにくい上に軽量です。
我戸 実はケヤキ自体はそんなに軽くないんです。どちらかというと重い材ですが、ギリギリまで薄く削ることで軽量化できました。
――攻めてますね。
我戸 山中漆器は縦木取りという木取り方法を採用していますが、このchabakoも縦木取りで作られています。木が成長するのと同じ縦方向に材料を取っているので、口の部分を薄くしても丈夫という特徴があるんです。
――山中漆器だからこその軽さと薄さ、丈夫さなのですね。
我戸 方向の違う木取りでは、ここまで薄いとせんべいのようにパリッと割れてしまうことがあります。
――木地の完成度の高さは山中塗器の特徴ですが、塗りは「拭き漆」という技法ですね?
我戸 完成度の高い木地を前面に出すために、あえて木目の美しさが見える透明感のある漆で仕上げています。
石川 「拭き漆」は漆の特別感がありながら扱いがラクです。だから、日常的に遠慮せずに使えます。
――茶筅(ちゃせん)などの竹製品はどこのものですか?
石川 代々続く名門の茶筅師を紹介していただき、実際に奈良の高山へ伺ってしっかりとお話を伺い、こちらのコンセプトもお話した上で、貴重な茶筅の取り引きが実現しました。茶巾も奈良の麻です。道のりは長かったですが、この茶箱に見合う価値あるものを入れることができて満足しています。
小さな箱から広がる日本文化の自由な世界
――この「chabako」をどのように使ってほしいと考えていますか?
石川 収納スペースを取らないので、身近に置いて、ちょっと一服したいときにササッとお茶を点てて楽しんでいただけたら……と思います。お客様にも、このchabakoでおもてなしすると、とても喜ばれます。茶箱点前でお出しした際に「大切にされていると実感できた」という嬉しいお声を頂いたことがとても印象に残っています。
――気負わずに心のこもったおもてなしができますね。
石川 そうなんです。どこでもお茶を楽しむことができるので、外にも気軽に持ち出していただきたいです。私は旅行が趣味なのですが、リゾートホテルのテラスでお茶を点てたりすることもありますよ。旅先で買い求めたお茶碗で、その土地の雰囲気を味わうこともあります。
――セット以外のものと組ませるのもアリなんですか?
石川 シンプルでベーシックなセットなので、どんなものとも相性がよく、自分だけのオリジナルを作ってみるのも楽しいと思います。また、茶巾(ちゃきん)筒で日本酒を飲むなど、他の用途に使うこともできますよ。
――意外と自由なんですね。
石川 日本には昔から「見立て」という文化があります。いろいろ遊んでみることで感性が磨かれます。
――chabakoという小さな箱には、茶道の精神が凝縮されていることがわかりました。
我戸 海外でも評判がよく、現時点ではドイツとアメリカとシンガポールで販売しています。お点前の方法を解説した英語のYouTube動画も作りました。
――世界的な抹茶ブームですが、その背景にある日本の茶道の文化が、このchabakoによって広まりそうですね。私たち日本人もchabakoで自国の文化をもっと身近に感じることができそうです。
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プロフィール
我戸正幸さん
がと まさゆき●1975年、石川県山中温泉生まれ。高校卒業後、県内の専門学校を経て上京し、漆器問屋に勤務して流通・販売を学ぶ。2004年、28歳で家業の(株)我戸幹男商店に入社。デザイナーを起用し、500点を超える商品を開発。2010年グッドデザイン賞中小企業長官賞、2022年A’DESIGN AWARD BRONZEなど国内外のデザイン賞を受賞。山中漆器の価値を高める取り組みを続けている。
石川恭子 さん
いしかわ きょうこ●裏千家茶道歴35年以上。東京・恵比寿で茶道教室「光雲庵」を主宰。百貨店等で「茶箱」や「立礼」のクラスを開催し、茶道を身近に愉しく取り入れる提案を行っていると同時に、茶道の監修・研修・イベントの企画運営を通じて、茶道の普及に寄与する活動に力を注いでいる。
撮影/西花優希、編集部 取材・文/依田邦代
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