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【べらぼう】蔦重(横浜流星)らがのめり込んだ「源内生存説」の真相は?

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鷹橋 忍

【べらぼう】蔦重(横浜流星)らがのめり込んだ「源内生存説」の真相は?

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第44回より ©NHK

横浜流星さんが主人公・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/蔦重)を演じる、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめものがたり)〜」。当時の文化や時代背景、登場人物について、戦国武将や城、水軍などに詳しい作家・鷹橋 忍さんが深掘りし、ドラマを見るのがもっと楽しくなるような記事を隔週でお届けします。今回のテーマは、平賀源内の生存説です。

NHK大河ドラマ『べらぼう』第44回「空飛ぶ源内」、第45回「その名は写楽」が放送されました。第44回では、井上芳雄さんが演じる重田貞一(さだいち/のちの十返舎一九)が、安田顕さんが演じた平賀源内が作ったという相良凧を持っていたことから、蔦重が「平賀源内が生きているのではないか」と思い始めました。

今回はこの「源内生存説」を取り上げたいと思います

【べらぼう】蔦重(横浜流星)らがのめり込んだ「源内生存説」の真相は?(画像2)

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第44回より ©NHK

源内の謎多き死

まず、平賀源内の死から振り返りましょう。源内の死については諸説ありますが、安永8年(1779)11月21日に殺傷事件を起こし、同年12月18日、小伝馬町の牢で獄中死したというのが通説とされます。

では、源内が起こした殺傷事件とはどんなものだったのでしょうか。通説では以下の通りとなります。

ある大名の庭の修理工事を町人が請け負いましたが、多額の費用がかかるため、関係役人は源内に見積もりをさせました。すると、源内は自分ならそれよりも大幅に安い費用でできると断言したため、仕事は源内に任されそうになりますが、少しばかりのいさかいの後、源内と町人が共同で請け負う形で落ち着きます。

和解の証として、源内の家で酒宴が催されました。役人は途中で帰りましたが、町人と源内は飲み明かし、そのまま泥酔しました。翌朝、目覚めた源内は、自分が作成した設計書や見積書を町人が盗んだと誤解し、逆上して斬りつけてしまったのです。

この説が有力ですが、源内の殺傷事件に関しては不明な点が多く、真相はわかっていません。源内の死因も、牢内でかかった破傷風とする説が有力ですが、自責の念から絶食し、餓死したとも伝えられ、こちらも定かではないのです。

【べらぼう】蔦重(横浜流星)らがのめり込んだ「源内生存説」の真相は?(画像3)

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第44回より ©NHK

源内は田沼意次にかくまわれた?

源内は当時の江戸では誰もが知る有名人でした。その源内が殺傷事件を起こしたとあって、江戸じゅうは騒然となったといいます。

源内ほどの奇才の持ち主が獄死するはずがない。あるいは、源内の死を悲劇に終わらせたくない。そんな民衆の願いが呼んだのか、「表向きは獄死とされているが、実は内々に助命され、密かに牢から出され、蝦夷の地で安楽な一生を送った。源内の墓が蝦夷にある」(平野威馬雄『平賀源内の生涯 甦える江戸のレオナルド・ダ・ビンチ』)など、いくつもの源内生存説が生まれました。

明治~昭和時代前期の国文学者で小説家の水谷不倒(ふとう/本名・弓彦)の『平賀源内』(『偉人史叢』第6巻)には、以下の源内生存説が記されています。

渡辺謙さんが演じた田沼意次(おきつぐ)は、源内が人を害して入牢したと聞くと、何としても助命したいと思いました。意次は一計を案じ、源内に麻薬を服用させました。そして牢死と偽り、自分の領地である遠江国榛原郡相良(静岡県牧之原市)にかくまったというのです。

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