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【ばけばけ】実は一番大人?「先生を射止めるのは大変よ」と、無自覚なトキ(髙石あかり)に寄り添うリヨ(北香那)の人間性に感心!

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田幸和歌子

【ばけばけ】実は一番大人?「先生を射止めるのは大変よ」と、無自覚なトキ(髙石あかり)に寄り添うリヨ(北香那)の人間性に感心!

「ばけばけ」第53回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節セツをモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

>>【ばけばけ】それは明らかに「嫉妬」では!?二人の距離が縮まる様子が自然に楽しい[写真多数]

ヘブンに漂う孤独と影の正体は?

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・セツをヒロインとする髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第11週「ガンバレ、オジョウサマ。」が放送された。

松江の冬は続く。ヘブン(トミー・バストウ)は相変わらず寒さに苦悩しながら日本で過ごす初めての正月を迎えていた。

日本の正月を楽しみながらも、
「デモ、サムイ。ツギ、フユ、ワタシ、マツエ、イナイ。ヨロシク」
と、やはり寒さに毒づく。松江での滞在も日数を重ね、ヘブンと松江の面々の距離も縮まってきたようには見えるが、やはり根っこの部分ではずっと異国、自分はエイリアンであるという部分は変わらないのだろうか。

「やっぱりただの通りすがりなんですかね」
と、そんなヘブンにトキも来日以来ずっとヘブンの面倒をみる錦織(吉沢亮)につぶやく。通りすがり。前週、自分は通りすがりのただの異人、死んでも悲しむなと言い、サブタイトルにも採用された言葉が再び登場する。インバウンドさかんな令和の世と、維新と開国まもない明治の世では、異国や異文化の馴染み方は全く異なるものだろう。

【ばけばけ】実は一番大人?「先生を射止めるのは大変よ」と、無自覚なトキ(髙石あかり)に寄り添うリヨ(北香那)の人間性に感心!(画像2)

「ばけばけ」第51回より(C)NHK

【ばけばけ】実は一番大人?「先生を射止めるのは大変よ」と、無自覚なトキ(髙石あかり)に寄り添うリヨ(北香那)の人間性に感心!(画像3)

「ばけばけ」第51回より(C)NHK

ヘブンにずっと漂うのは、孤独感である。松江の人たちにとってはヘブンはやってきた一人の異人。しかし、ヘブンからすれば、周りがすべて異人という環境である。船から下りたヘブンと握手をしたトキが、その手が震えていたように感じていたことも、印象的なシーンだ。鎖国以前だって日本での日常生活に異人が普通に存在したことは珍しかっただろう。

見ているぶんにはヘブンが日本の人たちを決して下に見ているわけでもない。寺社などで日本の神々の雰囲気に触れ興奮するなど、日本の文化風習には興味を抱くアカデミックな一面も持っている。しかし、やはり馴染むことはできていない。時が来れば帰る、「通りすがり」であると言い聞かせることが、ヘブンの孤独をなぐさめているのかもしれない。

【ばけばけ】実は一番大人?「先生を射止めるのは大変よ」と、無自覚なトキ(髙石あかり)に寄り添うリヨ(北香那)の人間性に感心!(画像4)

「ばけばけ」第53回より(C)NHK

ヘブンの心の拠り所のように描かれているのが、マーサという女性の存在だ。ミーシャ・ブルックス演じるマーサは、ヘブンがアメリカで結婚した相手で、ヘブンが自室に大切に飾っている女性である。写真を大切にしている様子はたびたび描かれてきたが、なぜそこまで大切にしているのか、気になる部分にようやく触れられてきた。

ヘブンとマーサの結婚は、失敗していた。その心の傷を抱え続けていることが、ヘブンに漂う孤独と影の正体のひとつである。

ヘブンのかつての妻・マーサは、黒人系の女性だった。当時のアメリカでも、白人系と黒人系の結婚は理解されないものであった。ヘブンはマーサとの結婚によって新聞社を解雇されてしまう。社会から受ける差別にやけになったマーサは、大家に剃刀で切りつけたことで収監される。ヘブンはそんなマーサとの幸福を掴むことができず、最終的に別離してしまう。それ以来、人と深く関わることをやめた。単なる「トオリスガリ」として生きていく。そう決意したのだという。

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