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【ばけばけ】こうして『怪談』は世に送り出された——その先に待つ、せつなく美しい幕引きとは

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田幸和歌子

【ばけばけ】こうして『怪談』は世に送り出された——その先に待つ、せつなく美しい幕引きとは

「ばけばけ」第120回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節子をモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

>>【ばけばけ】錦織(吉沢亮)がこの世を去った夜…映画『国宝』は日本アカデミー賞10部門受賞という“出来過ぎた偶然”

残り2週にしてついに『怪談』を書くターンに

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・小泉セツをモデルとした作品である。当初、これが発表されたときは、数々の八雲が残した『怪談』が、どのように朝ドラの世界に盛り込まれていくのかと、幼いころからオカルト好きだった自分としてはそういった側面からもワクワクしていた。

蝋燭がともされる中、ヒロインのトキ(髙石あかり)が『耳なし芳一』をヘブン(トミー・バストウ)に語り聞かせ、ヘブンが「スバラシ」「アリガトウ」と目を輝かせる第1話の冒頭を見たときには、こういった雰囲気で半年を展開していくのかと期待値が大いに高まった。トキが母のフミ(池脇千鶴)に聞かされる怪談が大好きで、嫌なことがあったら怪談の世界にこもるという設定も、この先何かの局面のたびに怪談が絡むのかと思わせられた。

だが、実際にはそういった描写はその後ほぼ登場しないまま物語は進行していった。かつて、『ちりとてちん』で、さまざまな古典落語を各週の題材としてその内容を寸劇風に見せ、本筋のストーリーと落語の内容をうまく絡ませていったように、『耳なし芳一』『むじな』『ろくろ首』といったハーンの『怪談』をどう盛り込んでいってくれるのかとも期待していた。

【ばけばけ】こうして『怪談』は世に送り出された——その先に待つ、せつなく美しい幕引きとは(画像2)

「ばけばけ」第118回より(C)NHK

この連載でも何度か触れてきたが、この『ばけばけ』は、「何も起こらない」物語を描いていくというコンセプトが掲げられてきた。昭和の時代から、実在する人物をモデルにしたもの、完全なフィクション、いずれにせよ「何かを成し遂げた」女性の一代記が描かれることが多かった。または『ゲゲゲの女房』(第82作)や『まんぷく』(第99作)、『あんぱん』(第112作)といった、「何かを成し遂げた」よく知られた人物の妻をヒロインとして描いたものだ。

ハーンの『怪談』は、実質的にハーンとセツの共同作品のような性質を持つゆえに、『ばけばけ』は『怪談』を二人でつくりあげていくさまがどう描かれていくのかといったものがもっと見られるものだと思っていた。

もちろん、「何も起こらない」朝ドラ、ヒロインが何者でもない朝ドラだって何作も存在する。たとえば有村架純をヒロインとした『ひよっこ』(第96作)や、橋本環奈ヒロインの『おむすび』(第111作)あたりはそうかもしれない。しかし、モデルは世界中で現在も親しまれる『怪談/Kwaidan』を届けた夫婦である。個性豊かな登場人物たちが織りなすストーリーを楽しみながらも、どこかには「いつ怪談を書くんだ?」ということを気にしながらの視聴であったこともまた確かだ。

【ばけばけ】こうして『怪談』は世に送り出された——その先に待つ、せつなく美しい幕引きとは(画像3)

「ばけばけ」第116回より(C)NHK

さて第24週のサブタイトルは、「カイダン、カク、シマス。」。サブタイトルで言ってくれている通り、残り2週にしてついに『怪談』を書くターンに突入した。物語の前半、来日したヘブンが『スバラシ』と感動していたように、前半の舞台になった宍道湖や神社の風景などの松江の風景は、ヘブンの言葉通り素晴らしいものがあった。

とはいえ実際のハーンは、熊本をはじめ、神戸や終焉の地となった東京など、さまざまな土地を移り住んでいるものの、神戸期間がまるごとカットされ、今週冒頭に時間が経過して東京に移り住んでおり、子供たちに恵まれ、勘右衛門(小日向文世)は他界しているなど一気に時間が経過していたスピード感には驚いた。

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