幼馴染のサワ(円井わん)との埋まらぬ溝は?錦織(吉沢亮)の昇進話は?【ばけばけ】が描く人間ドラマ
公開日
更新日
田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節子をモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
▼前回はこちら▼
>>【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ時の人となった、ヘブンとトキ
日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)とその妻・セツをモデルとしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第16週「カワ、ノ、ムコウ。」が放送された。
ヘブン(トミー・バストウ)が来日した目的であった日本滞在記は、ついに完成した。もともとその完成をもって日本を離れる予定であったが、トキ(髙石あかり)、そして松江の人々との出会いによって、これからもここで暮らしていくことになったことは説明するまでもない。
ヘブンの来日当初からさまざまなアシストを続けてきた英語教師の錦織(吉沢亮)も招き、西洋料理を中心とした完成祝いのパーティが松野家で開催された。馴染みはないものの好奇心豊かな松野家の面々らしく、珍しい西洋料理にも興味津々で楽しむわけだが、そんなヘブンと松野家の様子を記事にしたいと訪れた記者の梶谷(岩崎う大)による連載「ヘブン先生日録」が『松江新報』でスタート。
パーティ料理を食べていただけのことを「夕餉は西洋料理が定番」と書くなど、〝異人〟そして〝異文化〟への好奇心を煽るような記事は幅広い層に読まれ、そこに妻として登場するトキも、街で声をかけられ英語をしゃべってみてくれと頼まれるなど、一躍時の人のような状態となった。
「セカイ、イチバン、カワイイ、ジョセイデス」(ヘブン)
「センキュー」(トキ)」
「You’re welcome」(ヘブン)」
これだけでトキを取り囲んでいた女性たちは「キャー!」と盛り上がる。今ならSNSがその一番手にあたるのかと思うが、メディアの影響力の強さと滑稽さが浮き彫りになってくる。
「時の人」状態であれば、ヘブンと松野家に関することはなんでも話題になるわけで、フミ(池脇千鶴)が食事中に床の隙間に落とし拾えなくなった箸をめぐり、それを取ることができる人を連載で募ると大勢が駆けつけるといったコメディタッチの展開も巻き起こすほどとなり、街角ではヘブンとトキの似顔絵や扇子が売られ、フミは「変装」というかむしろ目立つのではないかという扮装で街を歩くなど、ヘブンとトキ、そして松野家は完全に社会現象化をとげた。
そんな微笑ましいノリのいっぽうで、今週のサブタイトル「カワ、ノ、ムコウ。」という本作の当初から意識づけられてきた、川と橋で区分されてきたあっち側とこっち側の世界。当初の松野家からの視点での「川の向こう側」は、言ってみればいわゆる「底辺」の世界のような扱いで、多額の借金によって川の向こう側に移り住むことになったことがこの作品の世界観を印象づけてきた。
