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【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ

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田幸和歌子

【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ

「ばけばけ」第73回より(C)NHK

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。『怪談』でおなじみ小泉八雲と、その妻 小泉節子をモデルとする物語。「ばけばけ」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

▼前回はこちら▼

>>【ばけばけ】大告白を見届ける羽目に…錦織(吉沢亮)の“所在なさ”にクスッ。引きの映像が光る名シーン

いわゆる「マスオさん生活」が始まる!

日本に伝承される怪談をもとにした作品を発表したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)と、その妻・セツをヒロインとする髙石あかり主演のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の第15週「マツノケ、ヤリカタ。」が放送された。

前週、ついに想いを通わせ夫婦として結ばれたトキとヘブン(トミー・バストウ)だが、これでキャッキャウフフという甘い新婚生活編となるわけでもないところが本作である。

本作ではトキが育った「松野家」をフィルターとした〝家〟というものに序盤からスポットがあてられてきた。現代ではその〝個人〟の概念も尊重されるようになってきたが、結婚とは家と家が結びつくことでもあり、それによるギャップや食い違いがどうしても生じることは変わることはないだろう。加えてトキとヘブンは国境を越えた、当時としてはかなり異例の「国際結婚」である。文化も風習も違い、そして言葉の問題もまだまだ存在する二人はどう暮らしていくのか。

今週のサブタイトルが、それを表しているわけだが、ヘブンは日本で所帯を構えたということもあってか、「ニホン、ヤリカタ、イク。ガンバリマス」と、「松野家のやり方」に合わせる、しかもトキの両親、司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)との4人での同居生活という、いわゆる「マスオさん生活」を開始することになる。松野家という〝家〟を存分に意識せざるを得ない環境だ。

【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ(画像2)

「ばけばけ」第71回より(C)NHK

【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ(画像3)

「ばけばけ」第71回より(C)NHK

【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ(画像4)

「ばけばけ」第72回より(C)NHK

いっぽうで司之介とフミまで含めたその〝家〟生活を支えるのは、女中としての給金は無くなったわけだが、言うまでもなくヘブンの高給だ。この時代の庶民における格差社会を象徴するように掲げられてきた、橋を隔てたあっち側とこちら側。巨額な借金がもとで引っ越すこととなった松野家も、トキの結婚によって、晴れて〝あっち側〟へと帰還をとげ、新生活をスタートさせることとなった。

結婚とは、夫婦お互いがそれぞれを尊重する一方で、どこかにある種の妥協や我慢もともなう側面ももつ。もとよりヘブンは細かなことにもワガママを言うキャラクターで、なにかといえば松江での生活に対して「ジゴク! ジゴク!」と口にするようなタイプだったはずだ。日本が好きになり、日本のやり方、松野家のやり方に合わせると言いおだやかな空気が流れるものの、どうにも無理をしているのではないかと感じてしまう。

「頬への口づけは、西洋では親しい人への挨拶」という西洋式のいってきますのキスも、「ここは日本ですけ」と、断られてしまうのは不憫に見えてしまう。ほぼ日本式の生活に合わせているヘブンにとって、「セイヨウ、ヤリカタ、モ、ネガイマス」と言う小さなお願いも断られるという、100-0のような関係性は、あきらかに我慢をともなうもので、この先が少し心配になってしまう。

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