ヤマザキマリさん「漫画だけでは子どもなんか育てていけない」10足ものわらじを履き続けるその真意
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ヤマザキマリ
『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』(主婦の友社刊)で、「表現」と「自由」の深い関係について語ったヤマザキマリさん。「表現とは? 自由、自信、普通とは?」新刊から一部抜粋してご紹介します。「自分の作品をどうしたら好きになれるのかを教えてほしい」という聴講生の質問に、ヤマザキマリさんはどう答えたのでしょうか。
音楽家だから音楽だけをやればいいわけじゃない。そして、同業者と比べないこと
尾崎(聴講生 ミュージシャン・22歳) 孤高のヒーローの話がとてもおもしろかったです。僕は音楽をやっていて、作詞、作曲、編曲すべて自分でやっています。ライブもやっているんですけど、対バンをすると、みんながバンドを組んでやっている中、僕一人だけカラオケを流して歌っているんです。どうしてもほかの人と比べたくなっちゃったり、自信がなくなったりする。
僕はヤマザキさんのように、暗いバックボーンがないし、テクニックも全然なくて、どうしても自分の作品を好きになれないんです。自分で書く詞が全部情けないなとか、どうしても何か好きになれません。ヤマザキさんは人の作品と比べて、どうやって自分の作品を見ているのか、自分の作品をどうしたら好きになれるのかを教えてほしいです。
ヤマザキ 自分の作品、好きかな。よくわからないですね(笑)。
ただ、毎回みなさんに楽しんでもらおう、私は海外に長く暮らしていてこんな知識を持っているので、それをみなさんにも提供したい、こんなおかしいこと、笑えることがあるからそれを知ってもらいたい、という意欲に突き動かされているだけのような気がします。創作をやり続けていけるのは自分がそれに向いているからであり、好きだからやっている、という感覚ではありません。
私は油絵をやめて漫画というスキルを選んだけれど、漫画だけでは食べていけないので10足のわらじを履いていました。漫画だけでは子どもなんか育てていけない。まずは自分には絶対無理だと思っていた事務職を体験し、それから見もしないテレビのリポーターになる、イタリア語を教える先生として大学を3校かけ持ちしました。そんなことをしているうちに、じつは自分は人前でしゃべるのが意外と向いているのかもしれないということに気がつき、実際、今もこのようにしゃべる仕事を続けています。
いろいろなことをやるといいと思いますよ。今、音楽で表現しなくてはと、出力口を一つだけに絞っているからおそらく苦しいことになっていると思うんです。私の事務職じゃないですけど、試しにまったく関係ない仕事を1回やってみるとそこから動線が引かれてくるかもしれない。
