【豊臣兄弟!】新たな面白き世を作ることを夢見る豊臣兄弟(仲野太賀、池松壮亮)。異彩を放つ竹中半兵衛(菅田将暉)の動向はいかに?
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志賀佳織
第10回「信長上洛」
第10回はいよいよ「信長上洛」である。美濃を平定した直後から、信長は「天下布武(ふぶ)」という言葉を打ち出す。天下布武とは、京の都に幕府を再興し、畿内五国(山城・大和・河内・和泉・摂津)を平定し、武士の力で再び世に秩序をもたらすことを意味するものだ。
信長が稲葉山城へ居を移した頃、一人の男が信長のもとを訪れた。明智十兵衛光秀(みつひで/要潤)、後ろには従者も控えていた。藤吉郎と小一郎は、信長の命で明智光秀一行に岐阜城下を案内した。光秀が信長を訪ねた用向きはひとつ、足利義昭(よしあき/尾上右近)を擁して上洛してほしい、そのために協力を仰ぎたいというものだった。その頃、畿内を支配する三好一族が将軍・足利義輝(よしてる)を暗殺したことで、室町幕府は将軍不在という異常事態となっていたのだ。
家臣たちが「殿、ここはよく吟味を」と息巻く中、信長はあっさりと「お引き受けいたす」と返事をする。「心配無用じゃ」と切り捨てると、つかつかと光秀の前に突き進み、いきなりその頭上に太刀を振り下ろしかけた。そして、光秀の素振りを見て、「やはり足利義昭様でございましたか」と、その後ろに控えている従者に話しかけるのだった。皆が驚く中、従者はきまり悪そうな笑いを浮かべて「参ったなぁ。なぜわかった」とその正体を明らかにした。
「今、この乱れた世を救えるのはわししかおらぬ。力を貸してもらいたい」という義昭に、信長と家臣一同はひれ伏してこう答えた。「この織田信長、必ずや義昭様を京へお連れし、天下布武を成し遂げてみせまする」
しかし、藤吉郎から上洛を知らされた小一郎は、状況の厳しさを口にする。京に上るには、その手前にいる大名の六角家と浅井家と争いになると言うのだ。だがそれに対して信長は、妹・市(いち/宮﨑あおい)を浅井家の当主・浅井長政(ながまさ/中島歩)に嫁がせるという手を打っていた。
ある日、市から藤吉郎に直々にお呼びがかかる。すぐに行けない藤吉郎に代わって小一郎が出向くと、「浅井長政殿に文を書こうと思うのだが、うまく書けない。作り話が得意なそなたら兄弟に代筆を頼みたい」と言われる。それは畏れ多いのでできかねると小一郎が断ると、市は頼みを取り下げるが、その表情から不安を察した小一郎はこう告げる。「聞いた話では、浅井長政殿は、秀麗なお顔立ちにて、気性もお優しく、物静かで穏やかな、誰からも慕われるお人とのこと、お市様はきっとお幸せになれまする」
「私も男に生まれたかった。さすれば、そなたのように兄とともに戦うこともできたであろう。周りの男どもが元服し、初陣を飾るたび、いつもうらやましく思うてきた。この婚礼は私の初陣じゃ。これほどめでたきことはない」。小一郎は明るく声をかける。「ならばお市様、どうかご武運を」
一か月後、市は浅井長政に嫁いだ。初めて会う長政は、小一郎の言葉通りの穏やかな気遣いのある優しそうな人物で、市の表情も少しほどけていく。祝言のあと、「我らは帰りますが、お困りごとがあればすぐに駆け付けます」と告げにきた信長の重臣・柴田勝家(かついえ/山口馬木也)に、市は小一郎への言伝を頼む。「嘘から出た誠じゃと。そなたのせいで私は不幸になったと」。冗談がわからず真剣に怒る勝家に、市は「相変わらず無骨な奴じゃなあ。でも長政殿より、私に合うていたかもしれぬ。いっそお前と一緒になるほうがましであったな」とからかい半分に言うと、無骨な勝家は急に口ごもって、慌ててしまうのだった。
市はその後、戦国の乱世に運命を翻弄され、長政との間に三人の娘を産み、長政が姉川の戦いで敗北し自害することとなった後、信長の死後、この柴田勝家と再婚することになる。政略結婚ながら、長政との夫婦仲はよかったと伝えられているが、勝家とも最後まで離れることはなく、勝家が賤ケ岳(しずがたけ)の戦いで敗れた後、市には城外退去をすすめたもののそれを拒み、ともに自決したと言われている。これはまだ先の物語であるが、そう知ってこの場面を見ると、もう一味違う感慨が湧いてくる。
永禄11(1568)年9月、信長は足利義昭を奉じての上洛戦を開始した。信長連合軍はひと月も経たないうちに京へ進軍して、京を支配していた三好三人衆と対決。摂津の芥川(あくたがわ)城での戦いに勝利して、上洛を果たした。
数日後、義昭は朝廷により、第15代将軍に任ぜられた。義昭は、信長を副将軍にしようとするも、信長に固辞されてしまう。義昭は信長の腹の底が見えないことに不安を隠しきれない。
信長は、重臣・丹羽長秀(ながひで/池田鉄洋)に命じて、諸国の大名に「直ちに上洛し、将軍足利義昭様に拝謁(はいえつ)せよ」との書状を出した。この書状にどう応えるかで、誰が敵となるのかが明らかになると踏んでいたのだ。書状を受け取った武田信玄(高嶋政伸)、上杉謙信(工藤潤矢)、徳川家康(松下洸平)ら各大名たちは、それぞれの表情を見せる。
一方、小一郎たちは、信長の計らいで、すっかりすさんでしまった京都の町に立って、民に向けて「ご祝儀じゃ!」と言って、銭を撒いていた。
信長は城から城下を眺めてこうつぶやくのだった。「天下布武など、ただの通り道じゃ。わしはこの日の本を一つにする。天下一統じゃ」
いよいよ本格的になっていく信長の天下一統への野望。これに対してまだまだ純粋な思いで従っている豊臣兄弟だが、やがて彼らも戦乱の中に巻き込まれて、苦い水も飲まなければいけない日が来ることだろう。直に誓った思いを、小一郎がこの先どうやって持ち続けるのか、そこにこの「青春譚」の青空のような希望がある気がする。楽しみに見守りたい。
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