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【豊臣兄弟!】織田信長(小栗旬)はなぜ追い詰められた? 幻影演出で見えた心の内は…

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志賀佳織

【豊臣兄弟!】織田信長(小栗旬)はなぜ追い詰められた? 幻影演出で見えた心の内は…

大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第27回「本能寺の変」と第28回「急げ!秀吉」です。

ついにこの物語の山場のひとつである本能寺の変の回を迎えた。これまで、さまざまなドラマや映画で描かれてきた戦国時代劇の名場面であるが、その時々でどう描かれるのか、どういう解釈がなされるのか、これほど興味を惹かれる場面もないのではないかと思う。

今回は、とにかく羽柴筑前守秀吉(ちくぜんのかみひでよし/池松壮亮)と羽柴小一郎長秀(こいちろうながひで/仲野太賀)の兄弟の出世物語を、とてもヒューマンなエピソードと、さわやかな疾走感で描いているので、そこにこの世紀のクーデターがどう入ってくるのか、それを受け止めた後の兄弟がどうなっていくのか、一層気になってしまう。

この数回の明智光秀(みつひで/要潤)の心情の変化は、とても繊細に描かれていて、徐々に徐々に追い詰められて、ギリギリのところにまで追い込まれていく様子を、要潤が非常に味わい深く演じていた。

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明智光秀(要潤)/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

第27回「本能寺の変」

天正10(1582)年3月、甲斐の武田がついに織田に敗れる。東国の一統を果たした織田信長(小栗旬)は、柴田勝家(かついえ/山口馬木也)には北国の上杉を任せ、三男・織田信孝(のぶたか/結木滉星)と甥・織田信澄(のぶずみ/緒形敦)に四国の総攻めを命じた。

その頃、秀吉と小一郎は、毛利方との境界にあった備中・高松城を攻めていた。湿地に囲まれた難攻不落の城を落とすため、堤防を築いて川の水を引き込むという前代未聞の水攻めに出たのだった。勝利を確信した秀吉は、小一郎に急ぎ安土に戻って「上様をお連れせよ」と言いつける。「毛利攻めの総仕上げは上様にやっていただくとお約束したのだ。上様自らご出陣とあれば、毛利もあきらめるだろう」

小一郎は、浅野長吉(ながよし/大地伸永)、藤堂高虎(たかとら/佳久創)、前野長康(ながやす/渋谷謙人)とともに、安土へと駆けつけた。ところがいざ会ってみると、信長はそのつもりはないと言う。高虎と長康は、実は秀吉は初めから信長の意向はわかっていて、その上であわよくば……と考えていたのではないかと言い出す。そうすれば勝家や光秀の鼻を明かすことができる。一同、あの秀吉ならやりかねないと納得するのだった。

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前野長康(渋谷謙人)、浅野長吉(大地伸永)、羽柴小一郎長秀(仲野太賀)/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

その頃、備中では、黒田官兵衛(かんべえ/倉悠貴)が毛利の使僧(外交僧)である安国寺恵瓊(えけい/立川談春)に和睦の交渉をもちかけていた。条件は高松城主・清水宗治(むねはる)の切腹と、備中、備後、美作(みまさか)、伯耆(ほうき)、出雲の割譲というものだった。しかし、恵瓊は毛利から3カ国までの割譲を言づかってきたと譲らない。官兵衛には、荒木村重(むらしげ/トータス松本)の説得に有岡城に行った際に、恵瓊に裏切られたという苦い記憶があった。それがゆえに信用できないのだと言ったところへ、秀吉が酒を持って入ってきて恵瓊に渡す。笑いのうちに秀吉が去ると、恵瓊はふと呟いた。「噂にたがわぬ人たらしじゃのう。黒田殿もわざと拙僧に喧嘩を売りましたな。その後にあのようにして羽柴殿が出てくれば、つい心を許したくもなる」

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黒田官兵衛(倉悠貴)/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

安土では、城を訪れた徳川家康(松下洸平)のもてなしが行われていた。接待役は光秀である。鯉の煮つけが供されたが、信長が自分の鯉のほうが大きいのは客人に失礼だとして取り返させる。ところが、箸をつけようとした家康が「この匂いは……毒かもしれませぬ」と言うのだ。

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織田信長(小栗旬)、徳川家康(松下洸平)、森乱(市川團子)ほか/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

「わしを狙ったということか」。信長は光秀とともに、ねずみにその鯉を与えたところ、ねずみは死んだ。驚愕する光秀。不気味なほど静かに問い質す信長に、「毒見はすませておりました。その後に何者かが」

「やった者に心当たりはあるか」光秀の脳裏に信澄の顔が浮かぶ。「わかりません」

信長の平手打ちが響く。「わかりません」と繰り返す光秀を信長は蹴り飛ばし、殴りつけ、怒りに任せて庭に投げ飛ばす。そこへ丹羽長秀(ながひで/池田鉄洋)がやってくる。「台所方の一人が口を割りました。毒を手引きしたのは、信澄様でござりまする。四国攻めに向かう前に、毒と銭とを渡されたとのこと」「直ちに後を追い、腹を切らせよ」

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

その夜、市(いち/宮﨑あおい)は信長といた。恩を仇で返した信澄がゆるせないと言う市に、信長は「よほどわしが憎かったのであろう。わしはどこかで、道を間違ったのやもしれぬ」と弱音を吐いた。それを聞き、励まそうとする市の言葉に、信長は声を荒げる。「血塗られたこの手で安寧の世など作れない、わしには壊すことしかできぬ」

市が去ったと入れ替わりに、信長のもとを小一郎が訪れる。市に「信長が呼んでいる」と言われてきたのだと言う。信長は小一郎に酒をふるまい、こう聞いた。「おぬし、兄を憎んだことはあるか。殺したいと思ったことはあるか」。すると小一郎は、「もうしょっちゅうでございまする」と答える。そして、「それでも放ってはおけぬのです」と続けた。「憎いというのは、慕っていることの裏返しにございます。信勝様もきっとそうだったのかもしれませぬ」

そんなことはあり得ないと言う信長に、ひるまず小一郎はさらにこう言うのだった。「それでも、まったくないとは言い切れませぬ。手前にはよくわかるのです。到底かなわぬ兄を持った弟の気持ちが」

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

信長はその言葉を聞いて「うぬの口車に乗るこの信長ではない」としつつも、こう言う。「間もなく茶会を開くため京に行く。そのついでじゃ。備中まで行って猿の尻を叩いてやるとするか。6月の4日、京の本能寺より出立する」

そして信澄についても、森乱(らん/市川團子)を呼び寄せて、こう言い渡すのだった。「急ぎ早馬を出せ。長秀に『沙汰があるまで待て』と告げよ」

信長の居室には信勝の位牌が、今もひっそりと置かれているのが見えた。

今回、小栗旬が造り上げた信長は「孤独」が芯になっていたように感じられる。「鳴かぬなら殺してしまえ」という荒ぶる気性の顔だけでなく、天下一統の高みを目指せば目指すほど、信頼できる者が減っていき、勝つための冷酷非道な決断も下さなければならない。そしてその陰で、良心の呵責に苛まれる。そのたびに心を開ける相手は減り、「誰も自分の気持ちはわからない」という追い詰められた心境になっていく。その過程が、「信勝」という弟をフィルターにして象徴的に描かれた。

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

そこへ「人たらし」の豊臣兄弟が、対照的な無邪気さで置かれるのだ。常に明るく、相手の懐に飛び込んでまっすぐ生きている彼らは、信長が望みながら得られなかった人間像であり武士像でもあり、同時に孤独な彼にとって、市に並ぶ数少ない「救い」だったのかもしれない。少なくともこの物語では、信長にとって「こう生きられたらどんなにかいいだろう」という存在だったのではないか。

5月29日、信長はわずかな供回りを連れて本能寺に入った。光秀の頭には信澄の「時は今じゃ。我らの手で信長を討つのです!」という言葉がこだましている。そこへ、足利義昭(尾上右近)の元へ使いにやっていた家臣の斎藤利三(としみつ/内藤剛志)が戻ってきた。しかし、義昭の指示を待ちわびていた光秀に、利三の返事はわびしいものだった。「もうわしを巻き込むなと仰せにございました」

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織田信澄(緒形敦)/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

ここに光秀の最後の支えが崩れ落ちた。さまざまな思いが頭の中を駆け巡ったあと、光秀は、利三にこう命じるのだった。「利三、みなに伝えよ。出陣じゃ。これは上意じゃ。敵は本能寺にあり!」

天正10(1582)年6月2日早朝、信長が寝所で休んでいると、森乱が走ってきた。「申し上げます。寺が取り囲まれております」「どこの軍勢じゃ」「白の桔梗紋。明智光秀様にございます」

信長を探し出せと息巻く明智側の前に、信長は鉄砲を持って現れる。しかし、たちまち多数の矢が放たれ、そのうちの1本は胸にささってしまう。火矢も次々に放たれ、本能寺はあっという間に炎に包まれる。

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

その中を、ひとり刀を振りかざしながら進む信長。ふと気づけば、炎の向こうには光秀が見える。「お覚悟を」と言われると、「お前じゃない」と言って斬り捨てる。だが斬ってみるとそれは光秀などではなかった。次に現れたのは浅井長政(ながまさ/中島歩)だ。必死で斬る信長だが、それも違う武士だった。さらにかつて皆殺しにした村人たちも、多数現れる。そして信澄も。森乱が斬り捨てると、それもまた信澄ではない別の者だった。

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浅井長政(中島歩)/大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

「上様、お気を確かに」「脇差を貸せ、頼む」ついに信長は肚を決めた。「よいか、わしの首、決して敵の手に渡すでないぞ」「お任せ…くださりませ」

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第27回より ©️NHK

森乱は去り、一人残された信長の向かい側には信勝の幻影が現れた。頭の中には明るい羽柴兄弟の、時々の顔が浮かぶ。「是非もなし」そう言うと、信長は腹に刃を突き立てた。信長の心情に絞って描かれ、自らが傷つけたと悔やまれる人物ばかりが幻影として現れる。信長の「孤独」をどこまでも見つめた「本能寺の変」だった。駆けつけた小一郎の目に、燃え盛る本能寺の炎が映った。

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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第28回より ©️NHK

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