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朝ドラ【風、薫る】女郎屋からの解放は幸せなのか——夕凪(セツ)が街へ踏み出すまでの道のり。看護婦見習いと医師たちの理念の違いにも注目

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田幸和歌子

1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください

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>>朝ドラ【風、薫る】女郎・夕凪を救う現場で浮かぶ、実習生の甘さと看病婦ヨシのたくましさ

夕凪の存在をめぐる展開がつづく

『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風、薫る』の第11週「凪にそよぐ」が放送された。

サブタイトルにある「凪」とは、ここ数週にわたりストーリー上で重要な存在となるであろう、直美(上坂樹里)の生みの親かもしれない女郎の「夕凪」の名前にかけたものであることは明らかである。

夕凪という名の女郎は、直美が街で突然似ていたからとその名前で呼ばれたことから、果たしてそれが直美の母かどうなのかということに焦点があてられてきた。

夕凪の存在をめぐる展開はつづく。

ある日、直美とりん(見上愛)が看護実習をおこなう帝都医科大学附属病院に、心中をはかった男女が運び込まれた。その女性こそ、女郎の夕凪(村上穂乃佳)である。夕凪の看護をしながら描かれる直美の複雑な思いや微妙な距離感といった内面とともに、女郎という存在そのものが抱える社会的な問題点にも迫る。

朝ドラ【風、薫る】女郎屋からの解放は幸せなのか——夕凪(セツ)が街へ踏み出すまでの道のり。看護婦見習いと医師たちの理念の違いにも注目(画像2)

「風、薫る」第52回より(C)NHK

朝ドラ【風、薫る】女郎屋からの解放は幸せなのか——夕凪(セツ)が街へ踏み出すまでの道のり。看護婦見習いと医師たちの理念の違いにも注目(画像3)

「風、薫る」第52回より(C)NHK

前者は、直美が夕凪の本名を問う場面にも凝縮される。魚住セツ、それが彼女の名前だ。ジブリ映画ではないが、自分の名前が取り上げられ別の名前を与えられ働かされる。前週、一命をとりとめた夕凪を、女郎屋「錦栄楼」の主人の権田(梅垣義明)が即刻連れ戻しに現れ、女郎は単なる「商品」としてみられ、人としての尊厳は軽視されていることが権田のふるまいからもうかがえる。彼女は「夕凪」という商品としての存在でしかないのである。

夕凪が直美の生みの親かどうかといった運命のいたずら的展開の前に、女郎・娼婦という、時には人として扱われないような存在に関する問題が目の前の現実として突きつけられた。直美は、「セツさん」と呼びかける。この本名で呼ばれることで自身の存在を確認できたかのように少しずつ柔らかい表情を見せ始めるセツ。これもまた「看護」のもつ本質であろう。

しかし、そこにある現実は簡単なものではない。前週も夕凪は「どうして助けた!?」と、直美たちに叫んだ。自分たちの看護や医師の治療によって元気になったところで、戻るのはまた〝地獄〟と呼んだ女郎屋での日々である。そのまま死なせてくれたほうが解放につながったかもしれないのにという思いの難しさも内包する難しい問題だ。

りんは、そんなセツの境遇をなんとかしてあげたいと、卯三郎(坂東彌十郎)に相談するなどしていた。卯三郎は、りんに廃娼運動についてとりあげた、ある新聞記事を見せる。その掲載元の新聞社を訪ねてみたところ、編集長の綿貫(小松和重)から夕凪への取材を求められるが、それはセツのことを世間にさらすことになったり、また連れ戻されることにもつながる。綿貫が言うには女郎の自由廃業は簡単なものではない。

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