朝ドラ『風、薫る』意地悪風味でイラッとさせる人物像の作り方—横澤夏子さすがの存在感と言っていいだろう
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。近代看護界の先駆者となった2人の女性を主役とする物語。「風、薫る」のレビューで、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
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>>朝ドラ『風、薫る』今井教授(古川雄大)の「しかし…」で印象一変。「命より重いもの」をめぐる意外な理解りんの背中を押す、直美と環とシマケン
抜けるような青空を見上げ、目の覚めるような緑に包まれた道を、晴れやかな笑顔で歩くりん(見上愛)。どこか第1話で栃木の街を歩く場面とも重なるようでもあり、りんの新たな人生がここからまた始まるかのような希望を感じさせるようでもあった。
『明治のナイチンゲール 大関和物語』(田中ひかる著・中央公論新社)を原案とし、激動の明治時代を駆け抜けた二人のナースを、見上愛・上坂樹里のダブル主人公として描くNHK連続テレビ小説『風。薫る』の第16週「新風吹くころ」が放送された。
りんは、前週、大腸がんで入院していた山本(本多大輔)の願いを叶えようと、山本が病院を抜け出し妻のもとへと向かうことに手を貸した。その後山本は急変しこの世を去る。それがりんが連れ出したことと直接関係があるかどうかは分からないが、その件でりんはバーンズ(エマ・ハワード)に看護を学び、直美(上坂樹里)らと一緒に学び働いた帝都医大病院をあとにする。
直美たち日本初となるトレインドナースの成長を見守ってきた捨松(多部未華子)は、りんに新潟の女学校の寮の舎監になることを提案した。一人で住み込みの仕事となり、娘の環(宮島るか)や母の美津(水野美紀)と離れて暮らすこととなる。
りんは、看護師としての給金で彼女たちの生活を支える「大黒柱」としての存在であった。病院を辞めることはそのまま環たちが暮らしていけなくなることに直結する。看護の仕事をするしかないと主張したりんではあるが、その一方で山本の件で自分の考える看護とは何かというものを見失ってしまい大きな壁に突き当たってもいた。生きるため、家族を生かすため、りんは捨松の提案を受け入れ、新潟へと向かう。
実はこの捨松にりんのことを相談していたのが直美である。「看護婦やめな」と厳しい一言を突きつけたのも直美だが、これもまた、りんを思って出た言葉だと考えていい。それが病人やけが人でなくともその心に、直接ではないかたちで、そして一歩引いたどこかクールな視点で見守る。これはこれまで直接寄り添うかたちで看護と向き合ったきたりんと対照的に描かれてきた直美の看護のスタイルに近いものではないだろうか。りんが心配する家族のことも、直美が責任もって見守る、環の二人目のお母さんになると言い、その背中を押す。
もちろん直美だけではない。
「寂しいけど、いいよ。寂しいと悲しいは違うでしょ」
こう言ってのける環に、いつの間にか内面的に大きく成長していたことを感じる。そして、
「僕はおじさんになる」
とシマケン(佐野晶哉)も続く。
担当する患者についてもそうだったかもしれないが、りんは自分でついついなんでも背負い込んでしまう部分がある。そこを長年の付き合いによって理解する直美、そして周囲みんなで支えあって苦労を分け合い、りんのあやうさ、もろさを補うというかたちは、周囲にりんという人物が理解されていることの裏付けでもあろう。
二人の主人公は、それぞれ新潟と東京、ふたつの街を舞台とし、二本の軸でこの先しばらくは展開していくこととなる。もちろん序盤もふたりが出会うまでは二拠点ドラマとして展開してきたわけではあるが、離れていった二人の主人公の人生を散漫にならずつなぎ、そして撚り合わせていくところに注目していきたい。
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