50代からのひとり旅は「頑張らない」でいい。テーマも予定も詰めない大人旅の楽しみ方【岸本葉子さん】
「ひとり旅、してみたい。でも少し不安」——そんな方も多いのでは? 「50代は『ひとり旅』の適齢期」と語る、エッセイストの岸本葉子さんが、50代で再開した旅の楽しみ方を綴った新刊が話題です。『50代からのしあわせ「ひとり旅」』から一部抜粋して全5回でお届けします。第5回は、テーマを決めない旅のすすめ。
▼前回はコチラ▼
>>シティホテル?ビジホ?温泉旅館? 50代のひとり旅で「無理しない宿」を決めるコツテーマもスケジュールも頑張らない
旅の本一般ならば最初に来るだろう「何をするか」がこんなに後になりました。
というのも「何かをしよう」と頑張らなくていいと思うからです。宿と交通の手配がついたら、旅はもう成立したと同然。
せっかく旅に行くのだから何かをしなくては、という思考になりたくないです。私ももったいながりなので「せっかく~だから」と考えてしまうのですが、この「せっかく~だから」という思考は、50代のひとり旅においては禁物です。せっかく交通費をかけて来たのだから、せっかく諸事やりくりして来たのだから……とつい頑張ってしまいがちです。
ひとりで出かけてきた、ふだんと違う空間に身を置いている、そこでの時間はどのように使っても構わない、人生の休日を得たようなもの。それだけでかなり旅の目的はかなえられたといえるのでは。
場所が変わるというのは、大きなことです。宿でゴロゴロしているだけでもリフレッシュ効果があります。
壁、天井、ドア、目に入るものが違います。しかも自分で掃除しなくてもきれいです。「ドアノブもずいぶん汚れているな」「天井の隅にホコリが」「冷蔵庫の中も整理しないと」など「圧」をかけてくるものがありません。自分で調理しなくても、食事ができます。そう、家事をしなくていいのです。たいへんな解放感。
考えてみれば、私が「ついで旅」でしているのは、その土地でなくてもできることがほとんどです。百貨店でタイツを買う。マチありで裏起毛のものを。スーパーで歯みがきペーストを買う。着色汚れを除去できて研磨剤は入っていないものを。住んでいる町でもできるけれど、ふだんは時間がとれなかったり、店に行っても棚の間が狭かったりで、ゆっくりと選べません。
禁物といいながら「せっかく」の思考を完全には捨てきれない私は、せっかく来たのだからと、観光名所へ行くこともときにはします。お城や史跡など「話に聞くから行ってみようか」くらいの主体性に欠ける動機で。ひとり旅だし、自分なりの価値観を持っているはずの大人の旅だからと、何かオリジナルなテーマを探さなければという発想はありません。
テーマがまったくないのも何をしたらいいかわからず困るとしたら、パックツアーで行くような観光名所へ、素直に行く選択はあります。あまり考えずにすんで、かつ、その土地を旅した実感を得られます。
