朝ドラ『風、薫る』今井教授(古川雄大)の「しかし…」で印象一変。「命より重いもの」をめぐる意外な理解
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田幸和歌子
物語は大きく動きそうだ
山本の死をひきずり、仕事の手がとまったりぼんやりしたりするなど、りんは仕事にも明らかに支障をきたすようになった。
そして、
「りん、看護婦辞めな」
そんなりんに、直美はそう言った。きわめて正論である。
りんの看護婦人生を途切れさせるような残酷な一言のでようであるが、これは、おそらく直美なりのりんへの思い、友情などからきた一言であろう。ある種のドクターストップ、タオル投入のような言葉で致命傷を避ける思いだ。このやりとりに、
「あんなふうに言わなきゃ、りんさん辞められない」
と、多江(生田絵梨花)が言う。直美の言葉は、直美なりにりんを救うために言葉という形で差し出した手だったのだろう。
そんな直美にもまた、一つの大きな「別れ」が訪れる。長屋のトヨ(松金よね子)の容態が急変し、そのまま帰らぬ人となる。
「医者に診てもらえたら、もっと生きられたかもしれない」
トヨの顔を見つめ、直美はこうつぶやいた。周囲は、自宅でみんなに看取られ大往生だ、こんなふうに死にたいなど力無く笑い直美たちに感謝するが、これはこれで、金銭面など生活環境によって満足な医療が受けられないという、現代にも通じる医療とその保障などの問題も考えさせられる。看護とは何か。それは、りんや直美が駆ける明治の時代だけでなく、令和に生きる我々にとってもまだ正解や結論が出ていないのかもしれない。
「看護婦としての『正しい』と、人としての『正しい』」
どちらを優先するべきか、ずっと「間違えてきた」りんは、自信を失っていた。山本とトヨの件を経て、直美もまた同じ思いだと打ち明ける。直美ならではのりんへの愛情、ずっと力を合わせて歩んできた二人だから通じ合えることもまたあるはずだ。
そんなりんに、自宅をたずねたシマケン(佐野晶哉)は、
「この筆者は、おそらくつらいときほどそうやって歯をくいしばり、笑い顔の面をつけてきたのであろう」
文芸的な表現でりんの思いを分析してみせた。これはこれでシマケン流のやさしさ、愛情表現だ。
そしてある日、捨松(多部未華子)がりんのもとを訪れた。女学校の寮の舎監にならないかと提案する。新潟で一人で住み込みの仕事となるという。この話については、直美と捨松が相談して進めていったものだ。捨松もまた、捨松なりの愛情や責任のもと、りんのことを考えてくれて行動する。これもまた、捨松なりに「差し出した」手である。
直美もシマケンも捨松も、りんへと手を差し出してくれている。看護という場面では差し出すことが正解でないこともあるが、誰かを思うとき、人は自然に手を差し出す。そんなことを感じさせてくれる第15週であった。
りんの選択はどうか。物語は大きく動きそうだ。
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