朝ドラ『風、薫る』神社に行った後、文(内田慈)と直美(上坂樹里)はどんな言葉を交わしたのか—余韻に溢れる週となった
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田幸和歌子
最初で最後の親子の時間を過ごしたことと
揺らぎ続ける直美の思い。文を診察した藤田(坂口涼太郎)にも、思わず「母親……みたいな人」と言ってしまう。これを聞いた藤田は、いろいろ察したのだろう、文の胃がんはすでに全身に転移がすすんでいる可能性が高く、治療は困難だと告げる。つまり、二人に残された時間はそう長くない。そして藤田は言った。治らない患者にも、病院に来られない患者にも、看護は必要だと言われ、直美はハッとする。そしていろいろな思いを封じ込め、あくまでもプロとしての看護婦であろうという決意を抱く。
そんななか、「急にお休みができたからね」と、りんが新潟から帰ってきた。久しぶりに再開したりんは、
「直美さんの気持ちでいいんじゃない? 直美さん、子どもなんだから」
と言った。りんは娘の環(英茉)から届いた手紙で、直美が思い悩んでいるらしいことを知っていたのである。そして、
「看護婦しなくていい、こんなときまで」
と口にした。残された時間は、母と娘として過ごしていい。かつて同じ病院の同僚として勤務した仕事上のことだけでなく、りんと直美、ふたりは心の奥底でも通じ合い、支え合うバディであることを実感させてくれた。離れていてもふたりは互いにかけがえのない存在である。
そんなある日、文は、看護をしながら添い寝していた直美の顔を慈愛に満ちた表情で触れ、お守りの生地を確認した。目が覚めた直美に、文は言った。
「ひとつだけしたいことがあります」
直美は文を熱海の神社へと連れて行く。患者を外に連れ出すという行為には、りんが帝都医大病院を辞めるきっかけとなった行動と重なるところもあるが、やはりそれぞれ核心には直接触れないものの、最初で最後の親子の時間を過ごしたこととなる。
その後、ほどなくして文はこの世を去ったのだろう。直接的には語られないが、登場人物たちのセリフからそう気付かせてくれるところも繊細であり優しさを感じさせてくれる演出だ。
そんなある日、環の寝顔をかわいいと言った直美に、りんの母、環の祖母である美津(水野美紀)は、
「それは簡単、親だから」
と言った。少し前に文が直美の寝顔を見て慈愛に満ちた表情を浮かべた場面が頭の中で重なりあう。美津はこう続けた。
「言っておきますが、直美さんが環の二人目の母ならば、私は直美さんの二人目の母ですからね」
本当の母ももちろん大切だが、直美にはここにも「母」だという存在がいた。今の直美の周りには、たくさんのひとがいる。りんは大切なバディであり、吉江だって父代わりのような存在でもある。直美はもう捨てられた天涯孤独の子どもではない。
「よくやりました。よくがんばりました」
その言葉に、いろいろと解放されたように、直美は号泣する。安心しきった様子は、たしかに美津と直美は本当の親子のようでもあるかもしれない。
直美と文、直美と美津、りんと美津、りんと環、そして直美と環……母と娘の関係性がいろいろな組み合わせで描かれ、決して血のつながりだけでない母娘の間の絆や愛が、本作の重要な柱であることを実感した。
神社に行った後、文と直美はどんな言葉を交わしたのか、どこまで親子は心を近づけられたのか、それを直接的には語らず感じとらせてくれる余韻に溢れる週となった。
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