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【ブラッサム】「逃げんさい」自分のために生きろと背中を押した母(国仲涼子)の言葉。朝ドラ史に刻まれる旅立ちの名場面

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田幸和歌子

「負けてもいい、これからいくらでも取り戻せる」と

「珠ささんは気にせず堂々と過ごして下さい」
保からのこうした言葉が珠を勇気づけてくれていた。

変わることがないどころか、酒蔵からも去ることとなり、珠の状況はますます悪くなる一方である。そんななか、享一と保の母であり、珠の叔母でもある照子(山田真歩)は、珠の母・リョウ(国仲涼子)に、岩国を出て保の身の回りをするのはどうかと提案する。保は今度は東京帝大に通うのだという。

このまま岩国にとどまっていては、娘の一生は台無しになってしまうかもしれない。そんな強い親心より、リョウは娘にこう言った。
「逃げんさい」

岩国を出て、親愛の情を抱き、現在唯一心を開ける存在である保のもとへ行けという。リョウは一度は叔母の照子の申し出を断ったものの、娘に幸せになってほしいという思いがリョウの心も突き動かした。
「じゃけぇうちもええ条件じゃあ言うたのに」
と笑顔で返す輝子もまた息子の保のようなおおらかさを持つようだ。

リョウは珠に、小さくなって生きる娘を見たくないと言う。しかし、逃げるのは負けではないか、負けたくない、そう悔しがる珠に、負けてもいい、これからいくらでも取り戻せる。これからは自分のために生きろ、そして、これからは正真正銘珠の人生、胸を張って生きろと大きく背中を押した。

これまで長い朝ドラの歴史の中、数々のヒロインが新たな人生のステージを迎えるため、郷里を出て都市を目指した。古くは『おしん』、『ちりとてちん』や『あまちゃん』など、いくつもの旅立ちの名場面は描かれてきたが、本作のこのリョウの母心を伝える場面もまた、この先多くの視聴者の記憶に刻まれていくのかもしれない。

【ブラッサム】「逃げんさい」自分のために生きろと背中を押した母(国仲涼子)の言葉。朝ドラ史に刻まれる旅立ちの名場面(画像6)

「ブラッサム」第18回より(C)NHK

さて東京。自由の街である。そのまま保の下宿を訪れるが、家族でもない男女が一つ屋根の下で暮らすことは認められないため「妹」だと申請していたようだ。さっそく新生活がスタートするが、

「ほんまはずっと、珠さんのことを思うちょった」
保のストレートさはある意味好感が持てる。しかし、当の珠には、本音を手紙で伝えられる唯一の存在ではあるものの、その気持ちがまだ愛情といえる感情には結びついていない。珠もそれを正直に伝えるが、岩国での辛いことがいつか忘れられたら、そのときはこっちを向いてほしいという。これもまた、保の人間性がよく伝わる対応である。

郷里から解放され、東京の街を歩く。ふと立ち寄った書店で手に取った雑誌に書かれた小説、そして「土橋風子」という名前に目が止まる。雑誌を読みながら珠はひさしぶりに自然な笑顔になる。
「いいよなぁ、文学」
ふたたび文学に触れる日々が到来した。

【ブラッサム】「逃げんさい」自分のために生きろと背中を押した母(国仲涼子)の言葉。朝ドラ史に刻まれる旅立ちの名場面(画像7)

「ブラッサム」第20回より(C)NHK

【ブラッサム】「逃げんさい」自分のために生きろと背中を押した母(国仲涼子)の言葉。朝ドラ史に刻まれる旅立ちの名場面(画像8)

「ブラッサム」第20回より(C)NHK

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