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「特別養護老人ホーム(特養)なのに費用が高い」その理由とは?代替案も
比較的、低費用で利用できると人気の特別養護老人ホーム(特養)ですが、実は一定の資産がある場合、民間施設の料金とあまり差がないこともあります。月額利用料の目安となる「資産基準」について、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生が解説します。
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預貯金の上限額が500万~650万円超に
施設への住み替えを含む老後資金のご相談を受ける際、「特養の料金は、いくらくらいだと思いますか?」と尋ねると、多くの方が「ひと月5万~6万円くらいですかね」「10万円以下ですむはず」などと答えます。確かに、月額6万円程度で利用できる方もいますが、その額ですむ方の割合は減っています。それは、資産基準が導入されたからです。
特養などの公的介護施設を利用する場合、その方の収入や資産状況を考慮して、「補足給付」という名称の利用料の軽減措置が受けられます。補足給付の対象は、居住費と食費です。特養の利用料は4段階制で、収入や資産が少ないほど、利用料が低くなる仕組みになっています(表1)。資産基準が導入される以前は、年金などの収入が少なければ、資産の額を問わず数万円の利用料で特養に入所できた方がたくさんいたわけです。
ところが、資産基準の導入以降は、少し事情が変わりました。一定額以上の預貯金があると、補足給付を受けにくくなったのです。その一定額の例を挙げると、2021年の7月までの資産基準は、夫婦で2000万円超、単身で1000万円超でした。この資産基準が2021年の8月に改正され、単身では500万~650万円超、夫婦で1500万~1650万円超に引き下げられました。金額に幅があるのは、年金額などによって、資産基準の適用額が変わるからです。
ちなみに65歳未満の人は、収入条件にかかわらず、単身で1000万円、夫婦で2000万円の資産基準が適用されます。
資産500万~650万円超では料金が10万円を超える
たとえば、預貯金が700万円の単身の方の場合、年金などの合計所得額が130万円だとすると、食費と居住費の利用料だけで月額8万円を超えます(ユニット型の場合)。合計所得金額には、遺族年金のような非課税年金も含まれます。食費と居住費に加えて、介護保険の1割負担分とさまざまな加算分を加えれば、月額利用料は12万~13万円くらいになります(表2、第3段階②に該当)。
介護が必要になった方は、持病の治療などで、医療費もかさむケースが多くなっています。医療費は別途自己負担になりますし、携帯電話を使っていれば、通信料などの個人的費用も発生します。
配偶者に先立たれてひとりになったのち、介護が必要になった段階で特養への入所を考える方も多いと思いますが、500万~650万円を超える資産をお持ちの方は、特養の月額利用料が10万円を超えるとの覚悟が必要になります。