「特養=安い」はもう古い!?年金だけでカバーできる特養以外の介護施設の探し方
足腰が弱くなると、介護が必要になっていきます。親が自宅でひとりで暮らしの場合、親本人も子どもも不安や負担が大きくなっていくもの。自宅にこだわらず高齢者施設の住み替えを考えておくのも安心につながります。高齢者施設にかかる費用について、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子先生が解説します。
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特別養護老人ホームは必ずしも安いとは限らない
高齢者施設というと、多くの方は特別養護老人ホーム(以下、特養)を思い浮かべるでしょう。加えて、「特養は公的施設だから安い」と思い込んでいる方も多いようですが、現在の特養は安い施設とはいい切れなくなっています。2016年度に、利用料の認定に資産基準が導入され、21年夏から、資産基準がより厳しくなったのです。
資産基準の導入により、一定の金額を超える資産を持っている場合、「補足給付」と呼ばれる利用料の軽減措置が受けられなくなります(表1)。一定額を超える資産とは、単身者で500万円、550万円、650万円のいずれか。年金収入が年80万円以下の方でも650万円を超える資産を持っていると、軽減措置は受けられません。ユニット型個室に入居した場合、介護保険の自己負担割合が1割でも月額費用として14万~17万円くらいかかります。2割負担の方だと20万円前後、3割負担の方では24万~26万円くらいかかるのです。
「20万円超の月額費用を払うなら、介護付有料老人ホームのほうがよいのでは?」と考える方も出てきています。「特養があるから、年金が少なくても何とかなる」とはいい切れなくなっていることを理解する必要があります。
特養は要介護3以上でないと入所申請ができない
もう一つの問題として、特養は要介護3以上でないと、原則として入所申請ができません(緊急性のある場合を除く)。介護が必要になっても、要介護2までは、特養以外で介護を受けるしかないのです。
要介護1や2で入居する場所として、介護付有料老人ホームを考える方が多いと思います。介護付有料老人ホームは、特養と同じく「特定施設入居者生活介護」(以下、特定施設)の認可を受けており、24時間365日、一定料金で介護を行います。
そしてもう一つ。特定施設の認可を受けている施設に「介護型ケアハウス」があります。ケアハウスはひとりで暮らすことに不安のある60歳以上の方が暮らす場所で、介護型ケアハウスは介護認定を受けている65歳以上の方向けの施設です。要介護1から入居できます(要支援からOKのところもあります)。
介護型ケアハウスは数が少ないために探すのが大変ですが、費用は比較的安価ですみます。要介護1や2の方では、ひと月9万~15万円くらいで入居できる介護型ケアハウスもあります。資産基準を超える方にとっては、特養ではなく介護型ケアハウスを選んだほうが、負担の少なくなる可能性があるわけです。
貯蓄はそれなりにあるものの、年金額が少ないという方は、元気なうちに介護型ケアハウスを探しておくことをおすすめします。
自立していてもひとり暮らしが不安で住み替える人も
さて、自立しているときに住み替えを考える方は多くないはずですが、ここからは自立時の住み替え先にも触れておきましょう。自立しているときの住み替え先の候補には、「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「ケアハウス」などがあります。この中で、費用負担が少なくすむのは、ケアハウスです。
ケアハウスは前述のとおり、60歳以上の自立した高齢者の住まい。月額費用のうち、事務費は収入に応じて軽減されます。たとえば年収が150万円以下の方は事務費が月1万円ですむため、ひと月7万~8万円くらいで暮らせるケアハウスがあります。この費用の中には、家賃、食事代(3食)なども含まれています。大浴場を利用するため、部屋にはガスを引いていないケアハウスが多く、水道代も毎月の費用に含まれるケースが多くなっています。月額費用の他にかかるのは、部屋の電気代と携帯電話代くらいですみます。