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【中野翠のCINEMAコラム】イタリアの美しい村を舞台に、古書店の店主と移民の少年の友情を描く『丘の上の本屋さん』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト、中野翠さんが、おすすめする映画について語ります。今回は、少年と老人、本を通した友情を描くイタリアの作品。深呼吸したくなるくらい、とにかく風景がいいのです。もう1本は、マリメッコの伝説的デザイナーのドキュメンタリー映画。カラフルでスマート、 オシャレ心をかきたてます!

今や小説だろうがエッセーだろうが、スマホやパソコンでサッサと読んでしまうのだろうが……私はダメ。やっぱり本のほうがいい。本のほうが味わい深く感じられる。本の装丁のいろいろ、ページを繰るしぐさ、読み終わって部屋のどこに安置(?)しようかと迷う楽しさ――。

というわけで、イタリア映画『丘の上の本屋さん』を愉しく観た。舞台はイタリアの丘陵地帯の町。一軒の古書店をめぐる話――。

古書店の店主・リベロは、もはや老齢。それでも、なじみの本好きたちがポツポツと店にやって来るので、やめるわけにもいかない。

なじみ客の顔ぶれが面白い。初版本のコレクターは言うまでもなく、アドルフ・ヒトラーの『我が闘争』の初版本を探しているスキンヘッドの男とか、なぞなぞ本好きの男とか、自分が出版した本を探し続けている老教授とか…….。

そんなある日、一人の移民少年が店にやって来た。「ミッキーマウス」のコミックを読みたいのに、おカネは無い。店主は、ついつい「読み終わったら返しにおいで」と、本を貸してしまう……。

やがて二人は老人と孫のような親しい関係になってゆく。そして――という話。とにかく風景がいい。清らかな空気が感じられる。深呼吸した気分。「天国に近い町」という言葉も浮かぶ。

『丘の上の本屋さん』

●監督・脚本/クラウディオ・ロッシ・マッシミ 出演/レモ・ジローネ、コッラード・フォルトゥーナ 他 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺 他 全国公開中(イタリア 配給/ ミモザフィルムズ)
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さて、もう一本。同じ3月3日公開のフィンランド映画『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』もオススメ。

北欧を代表するファッション・ ブランド「マリメッコ」の伝説的な女性デザイナーのドキュメンタリー映画。カラフルでスマート。 懐かしさと共に、オシャレ心をかきたてます。昔の服や雑貨であっても、今見ても新鮮に感じられるところが、さすが!

『マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン』

●監督/レーナ・キルペライネン 出演/マイヤ・イソラ、クリスティーナ・ イソラ、エンマ・イソラ 他 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA 他 全国順次公開(フィンランド、ドイツ 配給/シンカ、kinologue)© 2021 Greenlit Productions and New Docs

※この記事は「ゆうゆう」2023年4月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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