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年齢にとらわれている人へ。海原純子さんの“自分を伸ばす力”「年齢を経たからこそ気づけた自分の中の多様性を大切に」

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ゆうゆう編集部

自分の中の光っている部分を伸ばそう

それからの約20年は医師として仕事に邁進した。

「50歳目前、ふと考えてみたら、自己表現をする場所が全然ないことに気がつきました。もうそろそろ自分のやりたいことをやってもいいんじゃないの……そう思って、歌を再開したんです」

歌い続けていると、若い頃には気づかなかった変化を感じるように。

「日々、いろんな発見があります。ジャズをやっていると世界が変わっちゃう。予定調和のない世界ですから。たぶん人には絶対わからない、でも自分にはわかるという変化。人から大きな評価を得ることよりも、自分の中で『去年の自分より確実に進歩している』という実感のある生き方のほうが素敵だと私は思います。

ちょっとずつ自分が成長していくことに楽しみを感じます。そして私は成長こそが老いない秘訣だと思っているんです。年齢を重ねても、ずっと成長し続けていれば老いることはない。逆に成長が止まったときに老化が始まる——。だから目指すのは成長したまま死ぬこと。体は老化しても、心は常に成長を求めていきたいと思っています」

一度は封印した歌手の道を40代後半から再開

大学在学中からジャズシンガーとして活動していたが、医師になり封印。1999年から再び音楽活動を開始。ライブコンサートも精力的に行う。

6月9日にはライブハウス「珈琲美学」(東京都目黒区)にてジャズライブを開催予定。

若い頃は人から何か言われたり、比較されたりすることに苛立ちを覚えていたが、年齢を重ねるにつれてそうしたストレスも減ってきたという。

「人と同じじゃない生き方、自分固有の生き方ができるようになってきたし、人と比較されることもなくなってきたし。自分の世界をもてるようになったことで心がラクになりました。

たとえば医師の中には頭のいい人がいっぱいいて、研究で成果を出したり、処理能力が高かったり、そういう部分では私は絶対にかないません。でも何かを企画したり、人がもっている隠れたものを見つけたりするのは私の特性であり、強みでもある。人の総合力って比較できるものじゃないんです。最近よく多様性という言葉を耳にしますが、人の多様性というより、自分の中の多様性を大事にしたいと思います」

自分の中の多様性を大切にしていれば、人と比べて「私はダメだ」と落ち込むことなどなく、「でも私はこれができる」と前を向くことができる。

「苦手なことを克服するのは大事ですが、努力しても絶対に向いていないこともあります。それより、『自分はここが光っている』という部分を伸ばしてあげたほうがいいと思います。

これはずっと昔に聞いた話ですが、日本人のメイクはシミなどの欠点を隠して平均に近づけようとしますよね。でもフランス人は隠すのではなく、自分のいいところも悪いところもメイクで強調するそうです。そうすると、それが大きな個性になる。

私はその考え方がけっこう好きで、生き方にも通じると思っています。悪いところは強調しないまでも、どうしても無理な部分は『努力したけどダメだった。ごめんね』と見切りをつけて、いいところや強みを伸ばすようにしていくと、自分らしい生き方ができるのではないでしょうか」

親切であること、人に感謝できること、リーダーシップがとれることなど。皆さんもぜひ、自分の強みに目を向けてほしい。

「自分の中の強みに注目することは、ウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)を高めることにつながります。そして、それが生きるうえで次のステップになることも。強みを生かしながら生きていくことは、とても素敵なことだと思っています」

忙しい毎日の中で猫と過ごす時間が最高の癒やしに

海原さんの愛猫·ふーちゃん。「この子は4代目の猫で、今16歳。30年以上ずっと猫のいる暮らしをしていて、日々、猫に癒やされています」

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