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中森明菜さんデビュー2年目のストーリー。「不良1/2」だったタイトルは「1/2の神話」に変更された

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濱口英樹

「禁区」のテーマは不倫だった

追われる立場になった明菜さんにどういう楽曲を作るか。新しい路線を模索していた島田氏が次への布石として手がけたシングルが「禁区」(1983年9月)でした。タイトルは中国語で「立ち入り禁止エリア」の意。作詞の売野さんがアリスの北京公演(1981年)に同行した際、現地の体育館で目にした文字に衝撃を受け、「いつかこのフレーズを使おう」と温めていたものです。

珍しく詞先で制作された本作のテーマは“不倫”。桃井かおりさんの主演で映画化され、不倫カップルを意味する“夕暮れ族”という流行語を生んだ吉行淳之介の小説『夕暮まで』に着想を得たものでした。しかし、最初の詞は当時18歳だった明菜さんが歌うには過激すぎたため、大人の男性との恋愛を思わせる表現に抑えられたとか。そう聞くと元の詞がどういう内容だったか気になりますが、なにせ40年前のこと。紙にも、関係者の記憶にも残っていないというから残念です。

それはともかく、その売野さんの詞にメロディをつけたのが細野晴臣さん。テクノポップで世界を席巻したYMOのメンバーです。このときは萩田光雄さんと共同でアレンジも担当し、テクノ調の楽曲を提供。プロジェクトの狙い通り、バラードともロックとも違う曲想で明菜さんの新しい魅力を引き出しています。

独特な振付と「それはちょっとできない相談ね」のフレーズが話題を呼んだ「禁区」は人気番組『ザ・ベストテン』(TBS系)で通算7週の1位を獲得。日本レコード大賞では2年目の歌手を対象としたゴールデンアイドル賞と、TBSから贈られる特別賞をダブル受賞し、初出場した紅白歌合戦でも披露されるなど、この年を代表するヒット曲となりました。

次回は1984年のシングル曲についてお話しします。どうぞお楽しみに。

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【中森明菜「全アルバム復刻シリーズ」発売中です】

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オマージュ〈賛歌〉 to 中森明菜

島田雄三著
濱口英樹著
シンコーミュージック・エンタテイメント刊

本書は、1981年にオーディション番組『スター誕生!』(日本テレビ系)で彼女をスカウトし、ディレクター/プロデューサーとして足掛け5年(81~85年)彼女を担当した島田雄三(元ワーナーミュージック・ジャパン)の証言*を中心に、制作に関わった作家やスタッフにも取材し構成した「初期・中森明菜」の制作記録である。ひとりの歌好きな少女が時代を象徴するスターへと駆け上がっていく過程を、音楽的なこととその関連事項に絞ってドキュメンタリー的に描いている。
*CD[ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」(ワーナーミュージック)の解説を再構成し、加筆したもの。

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