【べらぼう】田沼意次(渡辺謙)が進めている蝦夷地を天領とする計画とは?
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鷹橋 忍
横浜流星さんが主人公・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/蔦重)を演じる、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめものがたり)〜」。当時の文化や時代背景、登場人物について、戦国武将や城、水軍などに詳しい作家・鷹橋 忍さんが深掘りし、ドラマを見るのがもっと楽しくなるような記事を隔週でお届けします。今回は江戸幕府による、蝦夷地を天領とする計画について取り上げます。
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蝦夷地と異例の藩・松前藩
松前藩は徳川幕府の時代に、蝦夷島(現在の北海道)に設置された藩です。松前藩は、藩の本拠地であった渡島半島南部を「和人地」(日本人の居住地)、それ以外のエリアを「蝦夷地」(アイヌ人の居住地)と、線引きしました。
松前藩は、石高がゼロという異例の藩でした。寒冷地である蝦夷島では、現代とは違い、米が収穫できなかったからです。
米に代って松前藩の財政を支えていたのは、アイヌ人との交易でした。松前藩はアイヌ交易の独占を幕府から許されていたのです。
松前藩では、はじめは蝦夷産物、木材、砂金(産出は江戸前期)、鷹などを商品とする交易収入が、後に交易を商人に請け負わせ、その運用金・雑税が、財源となったといいます(児玉幸多・北島正元・榎森進監修『新編物語藩史 第1巻』)。
松前道廣と松前廣年
えなりかずきさんが演じる松前道廣(みちひろ)は、明和2年(1765)、12歳で松前藩の第八代当主となりました。道廣は蔦重より4歳年下となります。
ひょうろくさんが演じる松前廣年(ひろとし)は、道廣の弟です。廣年は2歳で家老職を輩出する蠣崎(かきざき)家に養子入りしました。幼い頃から絵画の才に恵まれており、江戸に出て、文人で絵師の大原呑郷(どんきょう)に師事し、波響(はきょう)と号しています。
後に、寛政元年(1789)の「クナシリ・メナシの戦い」において松前藩に協力し、功績のあった12名のアイヌの長を描いた『夷酋列像(いしゅうれつぞう)』で、一躍、画家としてその名を知らしめる廣年ですが、ドラマでは福原遥さんが演じる誰袖(たがそで)から陰謀を仕掛けられていて、ちょっと心配ですね。