岸本葉子さんが47歳から始めた俳句の楽しみ方。「俳句を通せば “生きられなかった人生”を生きることもできます」
17音の中に季語を詠み込む俳句は、世界一短い文学。俳句の楽しみ方、おすすめの理由を、岸本葉子さんに伺います。前回は、句会の様子や、俳句のはじめの一歩について語っていただきました。後編では、岸本さんの俳句を紹介してもらいましょう。「上手になるコツは、できた句をどんどん人に読んでもらうこと」です!
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岸本葉子さんの俳句のすすめ。「始めるなら若者よりも年齢を重ねているほうが有利です」始めるのに必要なのは歳時記と筆記用具だけ
ところで、俳句を始めるならぜひ手元に置きたいのが歳時記です。歳時記とは、季語の解説と例句を載せたもの。季語をたくさん知らなくたって、歳時記があれば大丈夫。俳句を作るときは、歳時記で季語を探せばいいのです。
「ページを繰っていると、知らない言葉がたくさんあります。“竹の秋”がなぜ春の季語なのかしらと思っていると、春先の旅で金色に染まった竹の皮がハラハラ落ちるのを見て、腑に落ちたりする。そういうのがとっても面白いですね」
あと必要なのは、筆記用具だけ。
「吟行(外出して句を作ること)のときは小さいノート、家では普通の大きさのノートを使っています。必需品ではないけれど、あると便利なのは電子辞書ですね。吟行先で言葉を確認するために、俳句を始めてから買いました」
見たままを素直に詠めばいい 岸本さん作の俳句
◎柚子味噌に種の混じりていたりけり
ゆずみそに種が混ざっていたという、それだけの句。手作りだ、母の味だといったことは書かず、読み手に任せます。
◎紙皿のへりにおでんの練り辛子
寒い中、熱々のおでんを買い食いしたときの句。練り辛子も黄色くて安っぽいの。庶民の楽しみの様子を詠みました。
◎焼芋の断面見せて売られをり
見たままなのですが、読んだ人には「焼芋に哀れを感じる」などと言われました。意外な解釈をされるのが面白い