私らしく生きる 50代からの大人世代へ

人気記事ランキング 連載・特集

【中野翠のCINEMAコラム】真犯人は誰? 殺人事件をめぐる騒動に、 いっぷう変わったおかしみが漂う『私がやりました』

公開日

更新日

中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。ある日起きた、有名映画プロデューサーの殺人事件。果たしてその犯人は? この秋、ぜひ観たい極上のミステリーです。

「美」と「笑い」。フランス映画を代表するようなフランソワ・オゾン監督の新作は、パリを舞台にした殺人事件をめぐる話――。

ある日、パリの大豪邸で有名映画プロデューサーが何者かによって殺された。容疑者は新人女優のマドレーヌ。彼女は「プロデューサーに迫られて、自分の身を守るためにピストルで撃った」と主張。親友の女性弁護士ポーリーヌのあざやかな弁護にも助けられ、一躍、陪審員や大衆の心をつかんで、「正当防衛」で無罪ということに……。そればかりか、「悲劇のヒロイン」として名を知られ、スター街道を駆けあがることに……。

そんな絶好調の二人の前に、オデットという女が現れる。そして、「私が本物の犯人。あなたたち二人が手にした名声と富は、私のものだ」と言うのだ。奇妙な真犯人騒ぎが展開されてゆく。

時代設定は1930年代頃だろうか。当時の法廷の様子が興味を引くが、ファッションやインテリアも、おおいに見もの。映画のフィルムを止めて、ジックリと細部を見たくなる。私は、この時代のファッションが一番好き。前時代に較べると、スカート丈は短く、髪も短めになっている。活動的でありながら、刺繍やフリルなど手芸的な装飾があったりするのが楽しい。

監督のフランソワ・オゾンは、今や余裕しゃくしゃくの映画作り。若い女優二人を押しのけるような形で登場の「謎の女」めいたオデットを演じるのは、国民的女優のイザベル・ユペールという、ゼイタクなキャスティング。殺人事件であり、法廷劇でもあるわけだが、それに付き物の堅苦しさは無い。いっぷう変わった、おかしみが漂う。

それにしても……フランソワ・オゾン監督(67年生まれ、55歳)は、しぶとい。90年代からほぼ毎年一本は、というイキオイで映画を作り、ヒットさせて来た。脱帽。

『私がやりました』

監督・脚本/フランソワ・オゾン
出演/ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ 他

11月3日よりTOHOシネマズ シャンテ 他 全国順次公開(フランス 配給/ギャガ)

© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

※この記事は「ゆうゆう」2023年12月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

★あわせて読みたい★

【中野翠のCINEMAコラム】女性同士の団結に思わずウルッとなる『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』 【中野翠のCINEMAコラム】リチャード三世オタクの主婦が歴史学者もビックリの大発見を!『ロスト・キング 500年越しの運命』 【中野翠のCINEMAコラム】さすがの美貌も衰え始めたエリザベートに突き抜けたおかしみがにじむ『エリザベート 1878』

ゆうゆう2023年12月号

「片づけ上手ですっきり暮らす!」を大特集。体がしんどくならない片づけや掃除法を4人のプロが伝授します。住まい方アドバイザーの近藤典子さんが提案するのは、終活ならぬ「収活」術。今の自分の暮らしに必要なものを選び、適切な場所に収めていく方法を優しく教えます。その他、建築家・水越美枝子さんの「適所適量」の収納法や「お金も時間もたまる紙の片づけ」、掃除が苦手な人におすすめの「ついで掃除」など、読むだけで暮らしに前向きになれる特集です!
もう一つの注目企画は「もう家族疲れで悩まない!」。とても身近な存在だけに、悩みの尽きない家族ストレスについて、じっくり考えました。

※「詳細はこちら」よりAmazonサイトに移動します(PR)

詳細はこちら

PICK UP 編集部ピックアップ