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【中野翠のCINEMAコラム】男性並みのヒゲに覆われた女性!? びっくり仰天の実話『ロザリー』

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。今回は、実話をもとにした2作品『ロザリー』と『犬の裁判』です。

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コンプレックスを振り切ってみたら俄然プラスに!

ビックリ、仰天。『ロザリー』は奇妙な実話映画です。 1870年代(と言ったら、日本では明治の初め頃)、フランスに実在した女性(名前はロザリー)の話なのだけれど、フツーの女ではない。なんと、鼻の下からアゴにかけて、男たちにも負けない豊かなヒゲにおおわれているのだった! 生まれて来た時からの多毛症。そこらの男以上に立派なヒゲ……。毎日かかさず、ヒゲや体毛を剃るのも、ひと苦労。

持参金めあての、アベルという男と結婚したものの、やっぱりヒゲが邪魔して、夫婦仲は最悪。そんな中、アベルのカフェの客の一言で、考えが変わる。「ヒゲヅラのままで、いいじゃないか」と。堂々とヒゲヅラを見せつけてやれ……と。

実際、ヒゲヅラ後には、多くの客が店にやって来るようになった。ヒゲ女というコンプレックスを振り切ってみたら、俄然、プラスに働いたのだったのだ。

ヒゲヅラのロザリーが画面に登場した時、「エッ?! やっぱりヘンだよね、妙にコワイよね」と思ってしまったのだけれど、やがて「案外、すぐに慣れるものなんだなあ」と思ったりして。

主役・ロザリーを演じたのはナディア・テレスキウィッツ(1996年生まれ)。その夫を演じたのはベテランのブノワ・マジメルは女性のステファニー・ディ・ジュースト。5月2日公開予定。

『ロザリー』

監督・脚本/ステファニー・ディ・ジュースト
出演/ナディア・テレスキウィッツ、ブノワ・マジメル、バンジャマン・ビオレ、ギヨーム・グイ、ギュスタヴ・ケルヴェン、アンナ・ビオレ 他
5月2日より新宿武蔵野館 他 全国公開
(フランス、ベルギ ー 配給/クロックワークス)
©2024 - TRÉSOR FILMS - GAUMONT - LAURENT DASSAULT ROND-POINT - ARTÉMIS PRODUCTIONS

犬の罪を問う裁判。はたして彼は無罪か有罪か?

さて。もう1作。5月30日から公開予定のフランス・スイス映画『犬の裁判』。犬好き必見映画です。こちらも女性監督で、主演もしているレティシア・ドッシュ。コスモスと名付けられた犬をめぐる裁判劇をコミカルに――。

あらすじはこんなふう……。裁判では負けてばかりで、ガッカリしていた女性弁護士アヴリルに、奇妙な仕事が持ち込まれた。「コスモスという名の犬の弁護をしてもらいたい」という――。

アヴリルは、いやいやながらも、その仕事を引き受ける。犬の弁護なんて、もちろん初めて。そのコスモスという名の犬が、スゴイ演技派なのですよ! シンとした法廷の中で、堂々の演技! いじらしい! 犬好きの私は、もうそれだけで笑い泣く。まるで人間の言うことを、ちゃんと理解しているかのよう。あくまでも礼儀正しく……。

これもまた、実話をベースにした映画。両方とも女性監督というのも、うれしい。

『犬の裁判』

監督/レティシア・ドッシュ
出演/レティシア・ドッシュ、フランソワ・ダミアン、ジャン・パスカル・ザディ、アンヌ・ドルヴァル、コディ(犬)他
5月30日よりシネスイッチ銀座、UPLINK吉祥寺 他 全国順次公開
(フランス、スイス 配給/オンリー・ハーツ)
©BANDE À PART - ATELIER DE PRODUCTION - FRANCE 2 CINÉMA - RTS RADIO TÉLÉVISION SUISSE - SRG SSR ‒ 2024

※この記事は「ゆうゆう」2025年6月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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