【ブギウギ】人情刑事モノの第24週。高橋(内藤剛志)が差し出す特上カツ丼に犯人号泣
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。毎朝、スズ子に元気をもらえる作品「ブギウギ」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
★前回はこちら★
【ブギウギ】あの六郎の亀がまだ生きていた!旅立っていった周囲の人たちの代わりに、生き続けていくのだ
趣里主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第24週「ものごっついええ子や」が放送された。
基本的に半年という長いスパンで制作・放送される朝ドラの世界では、全体を通してのバランスが難しいこともあるのか、どこか長い尺を埋めるために継ぎ足したかのように感じるエピソードが届けられることが時々ある。
「ブギウギ」のこの週は、それらとはまた異なる位置付けだが、これまでと少し空気が異なるというか、番外編のような印象だった。
この週で描かれた大きな出来事は、スズ子たちが巻き込まれた、愛子(このか)の誘拐未遂事件である。これは実際に1955年に発生した、笠置シヅ子の娘の誘拐未遂事件をもとにしたストーリーだ。大スター笠置シヅ子は高額納税者の2位にランキングされ、移り住んだ豪邸の様子も報じられたりしており、金目当ての犯罪のターゲットにされる危険性は十分考えられた。
「ブギウギ」の世界で描かれた舞台は昭和30(1955)年。愛子は8歳、小学2年生になっていた。愛子は学校で友達ができず、母のスズ子にも反抗的な態度をとるようになっていた。そんな愛子のためにと思い、スズ子は自宅の豪邸で近所の人や子供たちも招いた愛子の誕生パーティを開くが、肝心の主役は楽しめていない様子でスズ子は子育ての難しさに悩んでいた。
そんなある日に届いた脅迫状。そして、「娘がどうなってもいいのか!」という脅迫電話。お金を用意しなければ愛子を誘拐すると脅す。突然の出来事にうろたえまくるスズ子。これまでの人生のなかで、愛する存在との別れをさまざま経験してきたからこそ大切な宝物として目一杯の愛情を注いで育ててきた愛子。
そんな愛子が奪われてしまうとなると、これまで何度もその辛さが描かれてきただけに、趣里の演技力も手伝い、その動揺の大きさはよく伝わる。いささかリアリティに欠ける展開にも感じるが、それが実際に起こった事件だということから、いかにスズ子、笠置シヅ子がリアリティの範疇を超えたスターであったかを確認することができる。
そんなスズ子たちのもとに現れたのが、内藤剛志演じる刑事の高橋。
スズ子たちに事情を聞く口調やたたずまい、それはもう、「ほぼ捜査一課長」。そう、内藤が主役をつとめるテレ朝系の人気シリーズ「警視庁・捜査一課長」の空気、人情刑事モノの世界が突然「ブギウギ」にやってきたかのようにも感じられ、「必ず犯人(ホシ)を挙げる!」という一課長の決めゼリフも今にも飛び出しそうな、ある意味2番組コラボみたいな空気感がそこに展開された。
「おじさんたちはその人を必ず捕まえるから!」
と愛子に諭す高橋刑事のセリフが“必ず”を強調したような言い方だったのも、捜査一課長オマージュの演出だったのだろうか。