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【光る君へ】右大臣となった藤原道長(柄本佑)。紫式部(吉高由里子)とかつて逢瀬を重ねた廃屋で再会を果たす二人

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志賀佳織

【光る君へ】右大臣となった藤原道長(柄本佑)。紫式部(吉高由里子)とかつて逢瀬を重ねた廃屋で再会を果たす二人

大河ドラマ「光る君へ」第17回より ©️NHK

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。『源氏物語』の作者・紫式部のベールに包まれた生涯を、人気脚本家・大石静がどう描くのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第17回「うつろい」と第18回「岐路」です。

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第17回「うつろい」では、いよいよ藤原道隆(井浦新)率いる中関白家にも凋落の影が迫ってくる。そして激しさを増す権力闘争の渦の中に、藤原道長(柄本佑)、まひろ(後の紫式部/吉高由里子)だけではなく、一条天皇(塩野瑛久)と中宮・藤原定子(さだこ/高畑充希)も巻き込まれ、翻弄されていく。

第17回と第18回「岐路」の見どころは、なんと言っても定子をはじめとする、内裏の女性陣それぞれの思惑と暗躍(?)ではないだろうか。公卿(くぎょう)たちの根回しにまさるとも劣らぬ駆け引きがそこここに見受けられて、いつの時代も生きるって大変!としみじみ思わせられるのだった。

正暦5(994)年、まひろは疫病に感染し、一時危篤状態に陥ったが、そこからすっかり回復し、庭を眺めていた。その様子を見て従者の乙丸(矢部太郎)が涙する。そして黙っていられずにこう告げてしまう。「姫様がお倒れになった日、姫様を助けて、この屋敷までお連れくださったのは、道長様にございます。一晩寝ずに姫様の看病をされて、翌朝、お帰りになりました」。倒れる前に道長を見た記憶がかすかにあったまひろは、「やはりあれは道長だったのだ」と改めて確信し動揺する。

一方、道長は関白・道隆に「疫病患者のための『救い小屋』を作るべきだ」と訴えに行くも、疫病は下々の民のものであって内裏には感染しないという道隆に、「やりたいならお前の財でやれ」と突っぱねられる。ならば自身の財でと決意したところへ、道長よりも財産持ちの妻・源倫子(ともこ/黒木華)が自分の財も使ってほしいと申し出る。「まことか?」「私は殿を信じております。思いのままに政をなさいませ」。妻の寛大な心に感激した道長は「すまない」と遠慮なくその申し出を受けることにする。

が、しかし。ここからの倫子の切り返しが恐ろしかった。「それより殿、悲田院(ひでんいん)にお出ましになった日、どちらにお泊りでしたの? 高松殿(道長のもう一人の妻・明子の住まい)ではございませんよね?」

一瞬、目が泳ぎ、言葉に詰まる道長。「うん、高松ではない。内裏に戻って朝まで仕事をしておった」「さようでしたか。お許しを」。なんと緊張感の走る場面なのだ。この倫子という女性のしたたかさを黒木華がみごとに演じていて、毎回ちょっと背筋がゾクッとする。そして、道長はしれっとバレバレの嘘をつきながら、廊下を渡り心の声でこうつぶやくのである。「まひろはよくなったであろうか」。倫子も切ない。

大河ドラマ「光る君へ」第17回より ©️NHK

一方、まひろはまひろで、父・藤原為時(岸谷五朗)から追及を受ける。「大納言様とお前の間柄はどうなっておるのだ」「どうもなっておりません」と答えるまひろに、父は訝しげだ。

だが、道長は気になってしまっているのである。従者の百舌彦(もずひこ/本多力)に「明日、まひろの様子を見てきてくれ。頼んだぞ」と命じてしまう。久しぶりに百舌彦に会ったまひろの脳裏に、7年前の道長の姿が浮かぶ。「地位を得てまひろの望む世をつくるべく、精一杯胸に誓っておる」。互いにこれだけ道が離れてしまえば、ますます難しいとわかっているだけに、より一層想いは募る。

そしてまた世の中が動く。かねてから体調を崩していた道隆は、定子のいる登華殿で笛の演奏をした直後、昏倒する。その晩、陰陽師(おんみょうじ)・安倍晴明(はるあきら/ユースケ・サンタマリア)を屋敷に呼び寄せた道隆は、「目がかすむ、手がしびれる、のどが渇く。これは誰ぞの呪詛に違いない」と息も絶え絶えに訴える。しかし晴明は、冷酷なほどきっぱりとこう告げるのだった。「それは呪詛ではございません。畏れながらご寿命が尽きようとしております」

内裏はざわめきたち、後継を狙ってあちこちで密談や懇願、哀願、恫喝、あれやこれやと起こってくる。まず一族の行く末を案じる道隆は、弟・藤原道兼(玉置玲央)を呼び寄せ懇願する。「頼む。道長と組んで、我が子らの行く末をつぶさないでくれ」

早速動いたのは「女院様」と呼ばれるようになった一条天皇の母・藤原詮子(あきこ/吉田羊)だ。兄・道兼と弟・道長を呼び寄せこう告げる。「次の関白は道兼の兄上であるべきよ。だってそれがまっとうな順番でしょう」。道兼のことは好きではないと言いながら、次の関白が道隆の息子・伊周(これちか/三浦翔平)になるのだけは阻止したい詮子。「他の公卿を取り込んでおくわ。公卿はみな伊周が嫌いだから、そこは私がひと押しすればうまくいくはず」

中関白家VS.藤原家の他の兄弟たち、という図式だけでなく、一条天皇を巡っての嫁姑の争いも絡んでくるから事態はより一層複雑になる。姑が動けば嫁だって動いてしまうのである。定子は登華殿に兄・伊周を呼び、こう告げるのだった。「父上のお命のあるうちに、兄上は帝から内覧(関白に準じる役職)のお許しを得られませ。父上から帝にお願いしていただいて。私からも帝にお願いしておきます」。一条天皇の寵愛を受けっぱなしの可愛いだけの后でないのだ。

そんな内裏のいざこざとは離れたところで、まひろは、久しぶりに友人・さわ(野村麻純)の来訪を受ける。石山寺以来の無礼を詫びるさわ。しかし、まひろに追いつきたいとの一心で、まひろからの文を書き写したという。「私の書いた文がさわさんの心を……。何を書きたいのかわからない。されど筆を取らずにはいられない」

病状が進んで鬼気迫る様子で、一条天皇のもとへ赴いては「伊周に内覧のご宣旨を」と訴え一蹴された道隆は、今度は定子のところへ踏み込み、「御子を産め、御子を産め」と言い放つ。一条天皇は結局、道隆の病の間だけという条件で伊周を内覧にする。そして、長徳元(995)年、道隆は43歳でこの世を去った。

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