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【光る君へ】ついに最終回。紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)二人きりの残りわずかな時間が何とも切ない

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志賀佳織

【光る君へ】ついに最終回。紫式部(吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)二人きりの残りわずかな時間が何とも切ない

大河ドラマ「光る君へ」第47回より ©️NHK

2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」。『源氏物語』の作者・紫式部のベールに包まれた生涯を、人気脚本家・大石静がどう描くのか? ストーリー展開が楽しみな本ドラマもついに最終回を迎え、隔週でお届けしたレビューも今回で最後になります。第47回 「哀しくとも」と第48回「物語の先に」、どうぞお楽しみください。

「光る君へ」のレビュー一覧
2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」レビュー

大河初の平安時代の物語ということで、放送開始前からとても楽しみだった今作も、夢中になって見ているうちに、あっという間に最終回を迎えてしまった。最後の最後まで波乱万丈でどこに行き着くのだろうとハラハラもさせられたけれども、一貫して守られたテーマが心に染みて、また『源氏物語』そのものの要素もふんだんに散りばめられて、非常に見応えのある作品だった。

第47回 「哀しくとも」

刀伊(とい)の襲撃を受け、太宰府の藤原隆家(たかいえ/竜星涼)は、襲撃を受けた時点で朝廷に下級の官庁から送る公式の上申書である解文を出していたが、受け取った藤原頼通(よりみち/渡邊圭祐)は何も動かずにいた。藤原行成(ゆきなり/渡辺大知)は、すでに出家している頼通の父・藤原道長(柄本佑)に知らせようとするが、頼通はそれを止める。

しかし、同じく隆家から文を受け取って事態を把握していた藤原実資(さねすけ/秋山竜次)が、事のしだいを道長に告げる。実資は動かない頼通に怒り、それを受けて道長も頼通を呼びつけて叱責するも、頼通は事態の収拾には莫大な費用がかかるといって聞き入れなかった。

頼通には道長の生涯の目標である「民のための政」という精神が伝わっていないのだなと、こんなところからも見えてくる。しかも、世はしだいに武力で物事を解決する方向に向かっていっている。双寿丸(そうじゅまる/伊藤健太郎)のような若者がまっすぐに笑顔で、武者として勲功を立てたいと戦場へ向かっていく様子は、その目に迷いがないだけに、次に来る血なまぐさい世の中が予見されて胸がざわつく。

数日後、実資は隆家からの文を持って道長を訪ね、敵を対馬の先まで追い払ったという文が届いたと報告する。「以前、隆家は朝廷も武力を持たなければならないと言っていたが、まことにそうやもしれません」と実資は告げるが、道長は「武力に頼る世になってはならぬ!」と語気を強める。道長は、実資に「消息を尋ねてほしい者がいる」と切り出すも、名前を尋ねられて思い直し、取り消した。

4月に起きたこの襲撃について、隆家たちから勲功者についての褒賞(ほうしょう)を願う文が届くも、それについての陣定が開かれたのは、6月末に入ってからで、褒賞の対象となったのは、わずか一人だった。

実資はその結果を道長に報告する。そこへ藤原公任(きんとう/町田啓太)も陣定の結果を知らせにやってきて、実資が道長と「通じて」いたことにショックを受け、道長を非難する。自分は道長と対立していた藤原伊周(これちか/三浦翔平)の弟である隆家を褒賞することは、それこそが道長に不利になると考えて反対したのに、と不満をぶちまけた。「俺はお前のためにあいつを認めなかった」

それに対し道長は、「国家の一大事にあっては、隆家をどうこう言う前に、起きたことの重大性を考えるべきである。何が起き、どう対処したのか、こたびの公卿(くぎょう)らのありようは、あまりに緩みきっておる。呆れ果てた」と切り捨てる。「俺達をそのように見ておったのか」と愕然とする公任。そこへ藤原斉信(ただのぶ/金田哲)がやってきて、二人を仲裁する。そして「ま、何があっても俺は道長の味方だから」と言葉をかける。

後日、公任のところを行成が訪れた。「なんであんなことを言ってしまったのだろう」と後悔する公任に、「それは道長様を大切にお思いになるゆえにございましょう」と、こちらはこちらで慰めの言葉をかける。「道長には伝わっておらぬがのう」とぼやく公任。意見の違いも立場の違いも、やはり長年の友情には勝てないのである。この物語で、「平安のF4」(道長、行成、公任、斉信)の果たした役割はとても大きかったと改めて感じる場面だった。

太宰府では、隆家が家臣たちに褒賞が認められなかったことをわびる。が、同時に双寿丸が仕える武者・源為賢(ためかた/神尾佑)を肥前守に推挙すると告げる。ここにも時代の流れが徐々に迫っている。

双寿丸はまひろ(紫〈藤〉式部/吉高由里子)のもとを訪れ、自分も肥前に行って武功を立てると言う。しかし、まひろの心には一抹の不安が過る。「武功を立てるということは人を殺めることではないの?」それに対し双寿丸は何も臆することなくこう答えるのだった。「殺さなければ殺される。敵を殺すことで民を守るのが武者なのだ」

都に戻るという隆家が「一緒に戻るか」とまひろに尋ねてくるが、まひろは答えられずにうつむく。そのとき、乙丸(おとまる/矢部太郎)が大声を張り上げる。「お方様、私はきぬ(蔵下穂波)に会いとうございます! お方様も一緒でなければ嫌でございます。あんなことのあったここにいてはなりませぬ。帰りましょう! 帰りたい!」必死で泣き叫ぶ乙丸に、まひろも苦笑して納得せざるを得なかった。

大河ドラマ「光る君へ」第47回より ©️NHK

二人は無事に京の屋敷に到着した。双寿丸に会ったと報告すると、娘の藤原賢子(かたこ/南沙良)は「私、光る女君となって生きようかしら」と言う。その夜、「母上の物語を読みました」と賢子はまひろに報告。「人とは何かと深く考えさせられました。母上は私の母上としてはなってなかったけれど、あのような物語を書く才をお持ちなのは、途方もなく素晴らしいことだと敬いもいたしました。されど、誰の人生も幸せではないのですね。政の頂に立っても、好きな人を手に入れても、よい時は束の間。幸せとは幻なのだと母上の物語を読んで知りました。どうせそうなら好き勝手に生きてやろうかしらと思って、さっき、光る女君と申したのです」

半ば投げやりとも取れる賢子の発言に、しかし、まひろは温かな微笑みを返すのだった。「よいではないの。好きにおやりなさい」

まひろは藤原彰子(あきこ/見上愛)に挨拶に上がった帰り道、屋敷内で道長と久々に出会ってしまう。互いの無事を確かめ安堵するように見つめ合う二人。だがそのとき、道長の妻・源倫子(ともこ/黒木華)から呼び出しがかかる。後ろ髪をひかれつつその場をあとにするまひろを、倫子が待ち受けていた。

大河ドラマ「光る君へ」第47回より ©️NHK

「お帰りなさい」と言って昔話を始める倫子は、次の瞬間、唐突にこう聞くのだった。「それで、あなたと殿はいつからなの? 私が気づいていないとでも思っていた?」

最後の最後まで気の抜けない倫子である。そして最終回の一歩手前で、こんな展開だなんて、ああ、本当にあと1回で終わるの?と誰もが思ったことだろう。

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