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作家・医師の【南杏子さん】が見つめる終末期医療の現場、二足のわらじの意義[後編]

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ゆうゆう編集部

編集者から医師に、そして作家業も。目標に向かって果敢に挑戦し、実現してきた南杏子さん。チャンスだと思ったら迷わずつかみ、まっすぐに突き進む。そのための努力はいとわない。そんな夢中が生み出す突破力が、南さんの原動力なのかもしれません。

▼前編▼
編集者から出産を経て、33歳で医学生。55歳で作家への軌跡、作家・医師の【南杏子さん】に学ぶ人生哲学

お話を伺ったのは
作家、医師 南 杏子さん

みなみ・きょうこ●1961年、徳島県生まれ。作家、内科医。
日本女子大学卒業後、出版社勤務を経て、イギリス滞在中に長女を出産。
帰国後、東海大学医学部に学士入学。現在は、都内の病院に内科医として勤務。
2016年、終末期医療がテーマの『サイレント・ブレス』(幻冬舎)で作家デビュー。『いのちの停車場』(幻冬舎)は映画化された。
その他著書は『いのちの十字路』(幻冬舎)など。

高齢者が穏やかな死を迎えるまでの医療を

「一般的に、医療は細分化され、消化器や心臓といったように臓器ごとに分かれています。でも私は、できればひとりで全身を見られる医者になりたいと思い、老年内科の医局に入りました。その後、WHOで出会った信頼する医師が、老年医療でいい病院があると紹介してくださったんです」

それが今、南さんが勤務している都内の高齢者向け病院だ。

「私の患者さんには90歳を超えた方もたくさんいらっしゃいます。8割の方が認知症を患っています。人がゴールまで生き切るためのサポートをする病院です。ここでは大学の教科書で学んだことそのままの医療が当てはまるわけではありません。それぞれの患者さんの日常生活のクオリティーを上げるため、患者さんに教えてもらいながら考えるのが私の仕事です」

南さんは、大学入学のために上京し、祖父母の家に下宿した18歳から20歳の3年間、祖父の在宅介護を手伝い、看取った経験がある。

「脳梗塞で倒れ、ほぼ寝たきりの祖父を、高齢の祖母がひとりで介護していたんです」

まだ介護保険制度がない時代だった。介護の技術も、介護を助ける道具類も一般に広まってはいなかった。

「在宅介護は、する側も、される側も本当に大変でした。手立てがないのだから仕方がないと、当時は思っていましたが……」

祖母も南さんも疲れ果て、介護は愛情だけではうまくいかない、辛いものは辛いと実感させられた。

「現在、私が勤務する高齢者医療の現場では、高齢の患者さんもご家族も納得いく日々を送る技術やノウハウ、設備が整いつつあります。こうした環境で祖父を看てあげられたらよかったのにと、思います」

内科医として都内の高齢者向け病院に勤務する。「人がゴールまで生き切る、というための医療が必要だと思っています」 撮影/樽矢敏広

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