【美しき日々】愛は人を走らせる。長い坂道を一気に駆け上がるイ・ビョンホン 17〜24話【韓国ドラマ】
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藤岡眞澄
イ・ビョンホンとチェ・ジウが作り上げた圧巻の40秒
一方、ミンチョルは、ナレからヨンスが白血病であると聞き、「もう別れるのはやめた。自分に正直に生きる」と気持ちを切り替えるが、ヨンスは「なぜ急に優しくなったかわかっている」と臆病になる。
そんなヨンスを抱き締めに、家に続く長い坂道を一気に駆け上がるミンチョル(21話)。24話では、病院から骨髄移植の適合者が見つかったと連絡が入り、乗っていた地下鉄を降りて100段近くの階段を駆け上がるシーンも出てくる。ここぞ、という大事なときに走るイ・ビョンホン。撮影当時30歳、役者は体力勝負だ。
実はイ・ジャンス監督は、主役のクォン・サンウがヒロインのチェ・ジウを追いかけてこれでもかと全力疾走するシーンが印象に残るドラマ『天国の階段』も演出している。愛は、人を走らせる。
明洞聖堂のマリア像の前で、ミンチョルはヨンスにプロポーズする。2人に内緒で、ナレ、ミンジ、セナたちが準備をした結婚式当日。ウエディングドレス姿のヨンスの指に結婚指輪をはめるミンチョルが一瞬見せるウインクをぜひ、お見逃しなく(22話)。
前半はクールで人間味が感じられなかった男が、温かい心を持った人間に変わっていく—— 一人の男の心の成長を見事に演じ分けるイ・ビョンホン。終盤では、コメディセンスあふれるお茶目なイ・ビョンホンにも出会えて、これがまた好い。
結婚式を終えてから、急速に病状が悪化するヨンス。最善の治療法は骨髄移植しかなかった。ようやくドナーが見つかるが、手術には大きなリスクも伴うと医師から聞かされる。
手術室にヨンスを送り出すドアの前。ミンチョルはヨンスに「ここで待っている。どこにも行かない。忘れないで、僕はここにいる」と声をかける。
するとヨンスは、ミンチョルの顔を忘れたくない、とでもいうように左手で顔をそっとなでる。そして、ミンチョルの手をとって自分の顔にも触れさせる(24話)。何度見ても、涙無しでは見られない。
実はこの“手”の演技は脚本にはなく、撮影現場でアドリブのようなかたちで2人から出たものだという。ミンチョルとヨンスになりきったイ・ビョンホンとチェ・ジウが作り上げた圧巻の40秒だ。
ラストは、再び歌手としてステージに立ったセナが、コンサートの最後に「お姉ちゃん、大好きよ」と客席のヨンスに駆け寄るシーン。
24話予告で、ミンチョルがうなだれて涙を流す“匂わせ”を見せられたにもかかわらず、のハッピーエンドに初見当時は驚き、そして「これでよかった」と胸をなでおろしたのを覚えている。
「死を超越した愛を表現したかったので悲劇でと考えていたのですが、あまりに(ヨンスを死なせないでという)要望が多かったので、ラストはハッピーエンドで終わることにしたんです」(※)と語るイ・ジャンス監督。ドラマサイトへの100万を超えるアクセス、掲示板への25万件の書き込みのパワーが結末を決めた、とも言える。
結論。50歳を超え、最近ではハードな役柄が多い印象のイ・ビョンホンが演じる“大人のラブストーリー”が見てみたい、と強く願う。
※『韓国ドラマ・ガイド 美しき日々』(日本放送協会/2004年)