【おむすび】「サッチンはギャルやん」発言に腰がくだける。トンデモ理論でギャル魂を「むすんで」くるとは!
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
▼前の話▼
【おむすび】今週が第1週でもいいのではという意見も。「平凡さ」を描く面白さがようやく浮かび上がってきた
「登場人物のデリカシーのなさ」が連発される
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』第9週「支えるって何なん?」が放送された。
今週は結も含めた「登場人物のデリカシーのなさ」が連発される週となった。
まずヒロイン結。ご存知の通り、結が栄養士を目指す最大の動機は「プロ野球選手を目指す彼氏を支えるため」である。しかし、まだ結は学校に通い始めてわずか。栄養とはどのようなものなのか、学びはじめたばかりである。
そんな結が、「彼氏(翔也)のため」に、現時点での知識でプロを目指す野球選手の3食の献立を考えて「あげる」というのである。しかも、それを同じ栄養士を目指す仲間である沙智(山本舞香)に手伝ってもらおうとお願いする。
「マジなめとん?」
沙智がこう半ギレしたのも納得である。そもそも初日の自己紹介から結に好感を抱いておらず、その後も同じ班に組み込まれたことで、「仲間やけん」といったギャル魂のノリで迫ってこられ困惑といった状況は続いていた。結が沙智に手伝いをお願いしたのは、彼女が過去にインターハイで活躍し、オリンピック選手候補となるほどの陸上選手だったことを知ったことから始まる。
そんな将来を有望視されていた選手が今なぜここにいるのか。気になるところではあるが、いろいろ事情があっただろうことはすぐ察せられる。
しかし、結は、
「なんで陸上やめたん?」
ストレートに本人に聞いてしまうデリカシーのなさ。しかも、オリンピックを目指していた沙智と、プロ野球選手を目指す翔也を支える自分を「同じ目標を目指す仲間」とくくり、自分も沙智も同じスポーツ栄養士を目指しているわけなんだからと、サンドウィッチマン伊達のゼロカロリー理論のような仰天のこじつけでくくってしまったのである。そりゃあキレないほうがおかしいだろう。
しかしこの段階では結は本質に気づかず、結局同じ班の仲間、森川(小手伸也)と佳純(平祐奈)に手伝ってもらいながら翔也の献立を作成する。仲間がいてよかったね、と言いたいところだが、この二人も結と同じく学んで間もないわけである。結が意気揚々と提案した献立は、明らかに「足りてない」ものだった。
「地獄のお好み焼きパーティー」が開催される
他の人のメニューに比べ、明らかに盛りの少ない翔也の食事量。あっという間に完食してしまい、空の食器をじっと見つめたり、水を飲んで空腹をしのごうとする翔也。野球選手じゃなく、まるで減量中のボクサーみたいのようにも見えるが、少ないことが分かりやすいというのはいい描写だと思った。
彼女がせっかく作ってくれた献立ではあるが、これまでの経験で自分に必要な食事がどのようなものかは翔也なりにもわかっているだろう。「ありがとう」と気持ちだけ受け取っておくことだってできたはずだが、律儀に守る純朴さは翔也のいいところだろうか。
そんな翔也だが、今度は結とのデート予定だったところ、米田家に呼びつけお好み焼きを一家とともに食べることになる。最初の挨拶で「結婚を前提に」と宣言したことを受けてのものではあるが、結が心の声で「地獄のお好み焼きパーティー」と呼んだ通り、翔也にとっては味も感じられないようなパーティーだったのではないだろうか。
結も翔也も、お好み焼きは献立以外のイレギュラーメニューであることは何も感じなかったのだろうかそこは言及されなかった。
この地獄パーティーでは、姉の歩(仲里依紗)が、翔也の実家のイチゴ農家について、規模などをいきなり探ってくるのもまた、デリカシーのなさを感じてしまう。ついでにいえば母・愛子(麻生久美子)はいつも理解あるふうであまり口を出さないものの、ちゃっかりブログに勝手にあれこれ書いている、しかもおそらく見る人が見ればすぐ特定できそうな感じで書いているのはある種のデリカシーのなさかもしれない