【おむすび】ある意味この先の展開は全く予想がつかない。仰天するような「むすび」が待っているか
公開日
更新日
田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
おむすび第10週
「人生初のスランプ」という意外と大変なことになっていた翔也(佐野勇斗)。どのように覚醒するか
結は自分の力で道を切り開いたというよりも
橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説『おむすび』第11週「就職って何なん?」が放送された。
このドラマは、「何事も楽しむ」ギャル魂と「困った人がいたら助ける」“米田家の呪い”と結らが呼ぶ精神をもとに、登場人物間のトラブルや溝をヒロイン・米田結がその名の通り結びつけてきては解決、解決したと思ったらいきなり時が進む構成で進められてきた。
最近の放送でも、当初ギスギスしていた同級生のサッチンこと沙智(山本舞香)、カスミンこと佳純(平祐奈)、モリモリこと森川(小手伸也)の「J班」の面々ともひとつになり、プロ野球選手を目指す彼氏の翔也(佐野勇斗)の食事の栄養管理も経験、米田家が営む理容店があるさくら橋商店街の防災訓練イベントでの炊き出しに加え、阪神・淡路大震災で娘を失った悲しみを十数年背負い続けてきた渡辺(緒方直人)の心も和らげることができた。
さて、栄養士を目指し、これからさらにどんなことを学んでいくのか? と思っていたら、いきなり1年が経過し学びはまるっとスキップ、サブタイトル通りに結たちが就職活動に奮闘するターンに突入していた。
周囲が続々と内定をもらう中、結と同じJ班の中年男性同級生・モリモリこと森川(小手伸也)だけがなかなか決まらず苦労するという状況となるものの、翔也への献立が功を奏したという評価に基づいた、翔也の先輩で巨人入りも決定した先輩・澤田(関口メンディー)からの提案もあり、疑心暗鬼ながらも結は星河電器の社員食堂の栄養士としての就職が決定した。
無事卒業となり、
「あんたが一番心配や」(サッチン)
「そうやん。いっつも人のことばっかし助けようとして」(カスミン)
「それは私も同意です。もっとご自身を大切にしてください」(モリモリ)
と晴々しい表情で結に言うJ班の面々。当の結も、「しょうがないやん。これ、『米田家の呪い』やもん」と返していたが、いや、そうだったか?
翔也のための献立も、紆余曲折あったのちにたどりついた形の柱を作ったのはサッチン。ナベさんのためにギャル向けデコ靴の原案をデザインしたのは母の愛子(麻生久美子)、たくさん修繕してもらおうと古靴をかき集めてきたのは姉の歩(仲里依紗)だ。前述した通り、就活に苦労する結を栄養士として採用してみてはどうかと社に提案したのも澤田だ。
当の結はといえば、眉間に皺を寄せ、いろいろ考えているような雰囲気だけ出していたようにしか見えず、結が自分の力で道を切り開いたというよりも、実際には周りの人の力があってこそではないか。実は困った結が毎回助けられているようにしか見えず、たとえばナベさんの件も最終的にわかめごはんおむすびを食べさせるという「締め」のような部分を担当しているだけといった場面も少なくない。
実質助けられているのに、すべてがヒロインが独断と自己主張のもとで進み、最終的には「ヒロインのおかげ」と着地してしまう、悪い意味での典型的朝ドラヒロインイメージがどんどん形作られていくという印象を受けてしまう。それを「米田家の呪い」ととらえる米田家のおめでたさもまた、当初からずっと気になる部分ではある。