なぜキャッチボールしながら肩の故障の告白を?ツッコミたいわけではないが、いろいろ気になってしまう【おむすび】
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田幸和歌子
1日の楽しみは、朝ドラから! 数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。平成青春グラフィティ「おむすび」で、より深く、朝ドラの世界へ!
※ネタバレにご注意ください
おむすび第11週
【おむすび】ある意味この先の展開は全く予想がつかない。仰天するような「むすび」が待っているか
まるで昭和の野球漫画のような展開だが
「投げるな、四ツ木!!」
カキーン!
「……ウゥッ……」
『おむすび』、いや、朝ドラの歴史の中でも記憶に残る場面として刻まれたかもしれない。
あるころから肩に違和感をおぼえ、その後は控えめな投球を続けてきた星河電器野球部の投手・四ツ木翔也(佐野勇斗)。その翔也に突然勝負を挑んできたのが大学野球で2年連続本塁打王という期待のルーキー、大河内(中山翔貴)だった。
大河内の挑戦を受け、一打席勝負をするのだが、肩を故障しながら大河内の挑発にのり、オリジナル変化球「ヨンシーム」を投げようとする四ツ木。おそらくそのヨンシームは、今の四ツ木の肩には負荷がかかるのだろう。冒頭の「投げるな」という絶叫は、投球を止めようとした野球部の監督のもの。
そして結局球は変化せず棒球となり、大河内の打球は大きくアーチを描き飛んでいく。打たれた四ツ木はといえば、うめき声とともに肩を押さえてマウンド上でうずくまる……。
まるで昭和の野球漫画のような展開だが、そもそもこの対決、四ツ木と大河内が投手どうしで、「オレのほうがいい球投げれる」と挑むならまだわかる。大河内がライバルチームのスラッガーというのでもいいだろう。
しかし、同じチームの投手の球を打ち崩して何の得があるのか。俺に打たれるような球じゃこの先プロでは通用しない、もっとがんばれとでも言いたかったのか。
NHK連続テレビ小説『おむすび』は、そういった細かな違和感や矛盾のようなものがとにかく気になってしまい、肝心のストーリー本筋に入り込めないところがある。
たとえば前々週。「お前は生真面目すぎてつまらん」とヒロイン・結(橋本環奈)の祖父・永吉(松平健)に言われるような父・聖人(北村有起哉)が、長女・歩(仲里依紗)の1万円もする高級シャンプーを使ってしまったことで、「バレないように」と安価なシャンプーと混ぜてごまかそうという場面があった。嘘もつけないぐらいの生真面目なのに、姑息、しかも言うまでもないが聖人の職業は理容師。シャンプーを混ぜてごまかすという発想は理容のプロとしてどうなのか。
今回放送された第12週『働くって何なん?』も、そういった細かな点がいろいろ気になってしまった。
ヒロイン結のターンとしては、晴れて栄養士として星河電器の社員食堂につとめ始めたものの、社食の責任者・立川(三宅弘城)に、その存在を認められないうえに、入社早々栄養士としての立場からメニューの味付けに意見したところ、微妙な立場に追い込まれてしまう。それを家でこぼすと、栄養士なんだから「結は間違ってない!」と全肯定する母の愛子(麻生久美子)のスタンスもどうかと思うが。