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なぜキャッチボールしながら肩の故障の告白を?ツッコミたいわけではないが、いろいろ気になってしまう【おむすび】

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田幸和歌子

細かなところをツッコミたいわけでもないのだが……

「おむすび」第55回より(C)NHK

ともあれ結は、社食の若手調理師・原口(萩原利久)と力を合わせつつ、立川のレシピを研究したり、立川に突如命じられその日の日替わりランチをまかされたりする(この日替わりランチは味などは好評だったものの提供に時間がかかるなどで混乱をまねき、社食という環境で適切なメニューを提供するということはという学びを得るわけではあるが)。

この社食のくだりでも、いきなり立川がその日の朝に「お前がやってみろ」と、社食のランチのメニューを結にゆだねるなど、まるで個人のレストランを舞台にしたドラマのような雰囲気でタスクが与えられたり(しかもその試食時点で時計の針はお昼の11時過ぎを指しており、ここから決定、準備してランチの時間に間に合うの!? とハラハラする)、その日替わりメニュー「スコッチエッグ定食」のボードを、在籍時からほぼ生かされていなかったようなというか、忘れられていたぐらいの「元書道部」という設定で毛筆で書いてみたりとか、なんだこりゃ!? という気になるところが満載なのである。

決してあら探しをしたいわけでもないし、いちいち細かなところをツッコミたいわけでもない。しかし、重箱の隅をつついてもないのに気になる矛盾やブレが目についてしまうため、仕方ないのである。

細かいところかもしれないが、IT企業に就職したという結の幼なじみで高校のクラスメート・陽太(菅生新樹)が神戸に出張でやってきて、米田家と旧交をあたためたりするわけだが、同じ日のはずなのに、シーンごとに陽太の坊主頭の髪の長さが伸びたり短くなったりしていたりすることも、撮影スケジュールの都合ももちろんよくわかるが、もう少しストーリーに集中させてほしいというところはどうしても感じてしまう。

そして、翔也の異変には全く気づくことはなくあらためてプロポーズしてくれるのかワクワクして顔芸を繰り広げる結も、「栄養士として彼を支える」という大きな動機を掲げている以上、もう少しプロ入りを目指す野球選手としての彼に興味をもってもいいような気もする。

「おむすび」第60回より(C)NHK

そして、悪いがもうひとつ。自分が肩をこわしたことを、結とキャッチボールをしながら涙ながらに告白する翔也。いい場面なのかもしれないが、ゆっくりとはいえなんで投げてんだよと気になるし、そこで泣かれても、異変を感じたときに適切な対応できなかったため自業自得のようにも感じてしまうし、「うそでしょ!?」と衝撃を受ける結のリアクションも、これまで見てきた自己中心ヒロイン的なキャラクターから、翔也を心配するというよりも、「私の夢はどうしてくれんの!?」という表情に見えてしまう。

プロ野球選手の夢が大きく崩れそうであり、この先奇跡の復活をとげるのか、栄養士・結はどう活躍するのか、ところで相変わらず商店街の面々と一緒にいなさそうなナベさん(緒方直人)のギャル向けデコ靴はその後どうなったのか。LAで歩はどうしているのか。折り返し間近だが、やはり先が読めないドラマだ。

なにかを成し遂げた人でない、平凡な人の人生を描く。当初掲げたコンセプトはそのようなものだったが、実際にごく平凡な一般の人の人生って、ドラマや映画のストーリーのようなものでなく、こんな感じに行動や発言に矛盾やブレだらけなのかもしれない。そう考えるとリアリティあるドラマということだろうか。

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