【坂東玉三郎さん】「いいと思ったら終わり」 養父からの教えを胸に、今なお芸を磨き続ける
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ゆうゆう編集部
舞台では描かれない時の流れを丁寧に演じて
シネマ歌舞伎『ぢいさんばあさん』が公開となる。歌舞伎界のゴールデンコンビ、片岡仁左衛門さんと玉三郎さんが夫婦役を演じる、森鷗外原作の名舞台だ。
「こういう題名なので、最初は歌舞伎の華やかな出し物という印象がありませんでしたが、よくできたお芝居です。あまり縁がないと思っていたのに、振り返ってみるとけっこうな回数を重ねてきましたね」
仁左衛門さん演じる美濃部伊織と玉三郎さん演じる妻・るんは評判のおしどり夫婦。子どもも生まれ、江戸で幸せに暮らしていたが、けがをした義弟に代わり伊織が1年間京都勤めをすることになった。翌年の再会を誓う2人だったが、伊織が同輩である下嶋を斬ってしまい、37年もの間離れ離れに……。舞台では若夫婦時代と年老いた37年後の2人が情感たっぷりに描き出される。
「実際にやってみると、夫婦が会えなかった37年間を演じる芝居なのだということをつくづく感じました。具体的に説明するのではなく、舞台では描かれないところを演じるという特別な演劇だと思います」
離れている間に大切なわが子は亡くなってしまった。だが、るんは奥勤め(武家奉公)をしながら、ひたすら夫の帰りを待ちわびた。
「るんは長年連れ添う女性としては理想的でしょうね。夫のほうも渡されたお守りを大切に持ち続け、37年後にようやく再会する。稀有な夫婦の時の流れを演劇で観ていただくわけです。お客さまもきっと2人が会えなかった37年間を想像して、あんな夫婦になりたいと思いながらご覧になるのではないでしょうか」
『ゆうゆう』2025年2月号
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