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50年前の刊行なのに【2025年上半期ベストセラー文庫1位】の快挙!有吉佐和子『青い壺』が共感の輪を広げる理由とは?

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藤岡眞澄

半世紀前に書かれた作品が、なんと、2025年上半期のベストセラー 文庫第1位になった!と話題です。昭和の作家・有吉佐和子の『青い壺』。復刊を担当した文春文庫編集部の山口由紀子さんに取材しました。ある「壺」めぐる13話の連作短編集とは……

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50年前の小説が、異例の快挙を遂げている!

1977(昭和52)年に刊行された有吉佐和子の小説『青い壺』。たった1つの美しく青い壺を、人々がさまざまな思惑や経緯で手から手へと渡していく——。十余年にわたる人間ドラマを、主人公ともいえる「壺」は静かに見つめ、歳月の重みはその風情と存在価値を増していく。

その「壺」と同じように、2011(平成23)年に復刊された『青い壺 新装版』(文春文庫/以下『青い壺』)も、令和の時代に、「こんな小説が読みたかった」という読書の喜びを、多くの人々の心に呼び覚まし、共感の和を広げている。

その現象を裏付けるように、『青い壺』は2025年上半期のベストセラー 文庫本第1位(トーハン・日販・オリコン調べ)を獲得した。およそ50年前の小説が、ランキング3冠を獲得するのは極めて異例の快挙。現時点(2025年6月)での累計発行部数は80万部に達する、という。

50年前の刊行なのに【2025年上半期ベストセラー文庫1位】の快挙!有吉佐和子『青い壺』が共感の輪を広げる理由とは?(画像2)

有吉佐和子さん(提供:文藝春秋)

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復刊担当者と小説の出会いは……

「編集部のプラン会議に提案する作品を探すために資料室に行ったら、文庫の棚で当時絶版だった『青い壺』の背に目が止まったんです。学生時代から有吉さんの小説はいくつも読んできたのに、『青い壺』は覚えがなかった。それなら読んでみよう、という軽い気持ちでした」

そう語るのは、復刊を担当した文春文庫編集部の山口由紀子さん。「読み出したら、時間が経つのを忘れるくらいページを捲る手が止まらなかった。おもちゃ箱みたいな一冊。これってすごく面白い、という感覚がありました」という言葉はそのまま、手に取った読者の体感とも重なるに違いない。先へ先へ、のワクワク感こそ本を読む醍醐味だ。

『青い壺』は「壺」めぐる13話の連作短編集。妻子を養うために、不本意ながらも請負仕事をこなしていた熟練の陶芸家が、ある日、会心の砧青磁の壺を窯から取り出すところから物語はスタートする。手元におきたいという陶芸家の意に反し、見る者を魅了する壺の美しさは、そこに留まることを許さなかった。

50年前の刊行なのに【2025年上半期ベストセラー文庫1位】の快挙!有吉佐和子『青い壺』が共感の輪を広げる理由とは?(画像3)

復刊を担当した文春文庫編集部の山口由紀子さん。「これはエンタメとして気合いが入った1冊だと感じました」

最前線のテーマが次々に繰り出される

1話ごと、次々と青い壺を手にしていく人々のキャラクターは実に多彩だ。

定年後に家でボーッとして妻に持て余される粗大ごみ化した夫、娘に嫁ぎ先の財産争いを愚痴られゾッとする小金持ちの親、年老いて失明しそうな母を介護のために引き取る中年独身女性、女学校の同級生と50年ぶりに出かけた京都旅行でモヤる熟年女性、失敗が重なり仕事に自信が持てないキャリアスタート女性……。

定年退職、遺産相続、介護、格差、女性と仕事といった、令和のいま、関心が高まっている最前線のテーマに50年近く前にエンターテインメント小説という手法で斬り込んだ小説家・有吉佐和子の着眼点の鋭さ、先見の明が光る。

そして、肝心の青い壺はそれぞれの登場人物にとって、贈り物になり、忘れ物になり、盗まれ、骨董市で発見され、買われ……。 しかも、その思いもかけない“流転”の過程で読者に「壺、そこで出てくる?」と不意打ちを喰らわすところが痛快。書きながら「しめしめ」とほくそ笑んでいる有吉さんの姿が目に浮かぶのは筆者だけだろうか。

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