【豊臣兄弟!】小一郎(仲野太賀)が思わず殴ってしまった太田垣輝延(中野英雄)、親子共演の名シーン!
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志賀佳織
2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第21回「風雲! 竹田城」と第22回「播磨(はりま)大誤算」です。
第21回「風雲! 竹田城」
第20回で織田信長(小栗旬)の逆鱗に触れ、ついに再起不能かとハラハラさせられた羽柴筑前守秀吉(池松壮亮)だったが、播磨攻めの大役を任され、第21回からはいよいよ播磨を舞台に、土地の大名たちとの攻防が始まる。今回の楽しみはなんといっても、羽柴小一郎長秀役の仲野太賀が、俳優である父・中野英雄と共演する場面だろう。新しい人物も次々に登場して、ますます兄弟は勢いよく天下取りへの道を駆け上っていくことになりそうだ。
当時の播磨には、赤松や別所などさまざまな「国衆(くにしゅう)」と呼ばれる土着の武士が存在していて、織田方と毛利方に分かれて対立している状況であった。つまり播磨を攻めるということは、その向こうに控える大物、毛利と対峙しなければならないことを意味してもいた。
荒木村重(むらしげ/トータス松本)は、それまで播磨の攻略を進めてきたのだが、ここへきて、秀吉にその株を奪われた形で、配下の中川清秀(きよひで/すがおゆうじ)や高山右近(うこん/市川知宏)からも責められていた。
天正5(1577)年10月、秀吉は、小一郎、竹中半兵衛(はんべえ/菅田将暉)と件の荒木村重とともに播磨の姫路城へ入った。村重は秀吉を、姫路城の城代(じょうだい)を務める小寺官兵衛尉孝高(かんべえのじょうよしたか/倉悠貴)と引き合わせた。「天才軍師」として秀吉の天下統一に大きく貢献することになる、のちの黒田官兵衛だ。
その官兵衛、いきなり「今よりこの城は、羽柴様に差し上げまする。ほんの進物代わり、どうぞお納めくだされ」と切り出して、一行を面食らわせる。すでに城主の小寺政職(まさもと)も説き伏せ、国衆である赤松と別所にも織田方として働くよう「計らっておきました」と言うのだ。赤松には「別所が密に毛利と通じて播磨を手に入れようとしている」と噂を流し、別所にはその逆を広めたところ、互いに焦って「織田様にお守りいただくしかない」ということになったと。「両家が織田につくとなれば、あとの国衆たちは黙っていても従いまする。これで播磨は織田様のものでござりまする」
その少々強引な手法に小一郎はいささかの不安を覚えるが、半兵衛も「人質をいただきとうござりまする。すべての国衆に人質を出させてくだされ」と要求する。しかし、これにも官兵衛は動じず、「まず初めに、この私の嫡男、松寿丸(しょうじゅまる)を差し出しましょう」と申し出るのであった。
数日後、織田への臣従を誓うため、秀吉のもとに播磨の国衆たちが出仕(しゅっし)した。しかし別所については、当主・別所長治(ながはる/下川恭平)ではなく、代わりにその後見人である叔父の別所賀相(よしちか/田中美央)が姿を現した。もう一人の後見人である叔父の別所重棟(しげむね/忍成修吾)も長治も織田への臣従に傾いているが、賀相がまだ毛利につく考えを捨てきれてはいない。今回、長治は、そんな賀相の顔も立ててやらねばという思いで挨拶に行かなかったのだ。国衆たちは逡巡していた。
秀吉も「めでたいんじゃが、どうも拍子抜けじゃ。こうもたやすく播磨を治められるとは」と訝っている様子だ。しかしそれも「荒木殿や官兵衛殿がこれまで労を重ねてくださったお蔭じゃ」と感謝する。早く帰って上様にお褒めの言葉をいただこうかと言う秀吉に、半兵衛が苦言を呈す。「それは早計かと。このまま毛利が黙っているとは思えませぬ。我らが気を緩ませ、背を見せた途端に、すぐに播磨に手を伸ばしてくると考えられまする」。そしてこのまま西へ進んで「まずは上月(こうづき)城を手に入れるべきかと」と進言するのだった。
上月城は、播磨、備前(びぜん)、美作(みまさか)の国境に位置していて、毛利・宇喜多(うきた)方の赤松政範(まさのり)が守っている城だ。確かにここを押さえたら、毛利もそう簡単には播磨に攻め入ることはできないだろう、秀吉もそれに同意して、小一郎は「今ならさほど犠牲を出さずに落とせるやもしれん」と見通しを立てるのだった。
さらに半兵衛は「あともうひとつ、手に入れたきものが……」と切り出した。それは「銀」だと言う。「この先、播磨をまとめに西の強国たちと渡り合うためには、莫大な銭が入り用となります。それをまかなうために」但馬(たじま)国にある生野の銀山に目をつけた、と言うのだ。
銀山は、但馬国主である山名家の家臣・太田垣輝延(てるのぶ/中野英雄)の支配下にある。天正5(1577)年11月、秀吉は、但馬攻めの総大将に小一郎を指名し、自らは上月城を目指して西播磨へ進軍した。小一郎は、藤堂高虎(たかとら/佳久創)や宮部継潤(けいじゅん/ドンペイ)、前野長康(ながやす/渋谷謙人)とともに、但馬国の竹田城を目指して向かった。
一行が目にした竹田城は雲海に浮かんでいるような天空の山城で、その近くの山中に陣を構えた小一郎たちはその景色に息をのむ。高虎が「あの程度の山城、一斉に攻めかかれば、我らの勝ちは間違いござらぬ」と言うのに対し、小一郎は皆を前に「わしはこの戦、一滴の血も流さずに終わらせたいのじゃ」と改めて自分の戦の考えを述べるのだった。
竹田城は観察していると、場内の井戸が枯れているようだった。水を外から運んでいるようであれば、城から出入りできぬようにしてしまえばすぐに水は底をつく。小一郎たちは、それを見計らって降伏を勧めようとする作戦を立てた。
竹田城内では水の枯渇に皆が苦しんでいた。しかし太田垣輝延は3日分しかないという水の半分を自分に寄越せと家臣に命じる。
いよいよ水が尽き、家臣たちも疲弊、憔悴しきる中、ある朝、竹田城に霧がかかる。するとそれに紛れて城の家臣たちは、水汲み場に急ぐ。貪るように水で喉を潤す家臣たちの前に小一郎が現れる。「案ずるな。おぬしらを傷つけるつもりはない。まずは心行くまで水を飲むのじゃ。その後にわしの話を聞いてもらいたい。わしはおぬしたちを助けたいのじゃ」
家臣たちは水を汲んだ大きな桶を担いで城へ戻った。輝延は家臣たちを押しのけ、我先に水を飲もうとするが、その瞬間、水を運んできた家来たちがかぶっていた笠などを脱ぎ捨てて、輝延に刀を向けた。家来に扮していたのは、小一郎と高虎たちだったのだ。小一郎たちは輝延を押さえながら、周りの家臣たちに水を飲ませてやるのだった。それを見た輝延は騒ぎ立てる。「お前ら、敵の施しを受けるとは恥を知れ! 飲むなと言うたろうが。何をしておる、早くこいつらを斬らんか! 刺し違えてもわしを助けよ。斬れ、斬れ、斬らんか! それがお前らの役目であろう」
その瞬間、小一郎が輝延を殴りつけた。「家臣の命を何だと思っておるんじゃ!」。そして「あっ」と気づく。輝延の鼻から血が一筋流れていたのだ。「一滴たりとも血を流さぬつもりであった。が、無理じゃった」。ナレ―ションが入る。「こうして小一郎は竹田城を無血開城……あ、ほぼ無血開城し、初めてその城代を任されることになりました」
そう、この輝延を演じた俳優・中野英雄こそが、小一郎を演じている仲野太賀の実父であり、ここは親子二人だけで正面から演じる真剣勝負のシーンだったのだ。
実は筆者、予備知識のないままにこの場面を見て、輝延を演じている俳優が誰なのかがまったくわからず「これは誰だろう」と思っていたのだ。中野英雄といえば、ドラマ「愛という名のもとに」で記憶している世代なのである。あの時の「チョロ」とあまりに印象の違う今回の役柄に感慨深いものがあるとともに、年月は、中野英雄をこんなにいいお父さんにしたのだなと、そのことにも感動した。仲野太賀もとてもいい演技をしている場面だった。
輝延の身柄は山名の主のもとに送られ、ほかの家臣たちは織田に臣従することとなった。ホッと胸をなでおろしていた小一郎たちだったが、そこへ前野長康から生野の銀山もつつがなく進んだと報告があった。しかし、一方で気になる知らせも届いた。上月城は大勝利を収めたものの、「上月城の者は皆、斬首され、女、子どもに至るまではりつけ、串刺しにされて、西との国境にさらされた」というのだ。そして、それを命じたのは秀吉であると。小一郎は慄然とする。
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